歩いても 歩いても  
2017.08.31.Thu / 23:15 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






心の底に秘めたる感情を押し殺している女たち。
単純なプライドに縛られている男たち。

だから永遠に断絶している。
彼らの距離は埋まらずに、
受けた悲しみも時間は解決しない。

大人であれば習慣を変えることは難しく、
家族であれば距離が近すぎて本音も語れない。
いつでも顔を合わすことができるのならば、
語り合うのも後回しでも構わない。

しかし、それでも救いはある。
今から家族になろうとしている人々。
今から大人になろうとしている少年。

普段通りの家族の会話。
そこに散りばめられた毒。
そんな毒に、時にクスりと笑わされ、
時にグサッと胸に突き刺さった映画。




兄の命日に親族が集まる。
すでに引退している医者で、父親の恭平と妻のとし子。
父親のもとに引っ越しを考えている、長女のちなみ。
就活中で子連れのゆかりと再婚した、良多。
映画の冒頭は、とても幸せそうな風景。
共に調理をして語り合う、ちなみととし子。
男である良多が実家に帰りたがらないのも、よくある光景だ。
けれど、徐々に明かされていく家族の事情。

そりが合わない恭平と良多。
亡くなった長男と自分を比べる恭平が嫌いだ。
でも本心では、
父親の希望に応えることができなかった自分の不甲斐なさ、
それが劣等感となっている。
そんな気持ちを誤魔化すために父親とは話をしたくはない。
本当は医者に成りたかった。
子供の頃の夢の作文を皆の前では破り、
その後、修復する姿が可笑しくも哀しい。


昔は皆に医者として尊敬されていた。
けれど、今では単なる厄介者。
誰かが自分の後を継いでいてくれていれば、
違っていたのかもしれない。
多分、そうならないであろうことは分かっている。
それでも夢を見てしまう。


長女が自分の処に越してくる。
けれど、本心では、それがイヤな、とし子。
母親は本心を語らないが、それを察している、ちなみ。
母親が愛しているのは、長男であり、次に次男。
ちなみには、それも良く分かっているのだろう。


良多の再婚相手が気に入らない。
けれど、面と向かってそれは言えない。
だから、オブラートに包んだ毒を吐き続ける、とし子。
それを巧みにかわす、ゆかり。
休憩時間が必要なのが、とてもリアル。


長男が助け、それが彼の死因の原因となった青年、あつし。
本当は来るのは嫌なのだろうし、招く方も嫌なのだろう。
それでも招き続ける、とし子。
自分と同じ思いを誰かにさせたい。
それは復讐というよりも嫌がらせに近い。
そして、今更ながらに語られる、思い出の曲の意味。


心の底に秘めたる感情を押し殺している女たち。
単純なプライドに縛られている男たち。
だから会話は進まない。本心は分かち合えない。
そして、気付いた時には、もう間に合わない。
それでも、この映画には救いが示される。

映画の冒頭では、
死んだウサギに手紙を書くことの意味が分からなかった、ゆかりの連れ子。
けれど、これからジワジワと良多が入ってくる。
亡くなった人、家族、そして墓参り。
徐々に良多が入ってくる。
ピアノの調律師に成りたいのは父親の後を継ぐため。
医者に成りたいのは、義父と義祖父の夢を追うため。


普段通りの家族の会話。
そこに散りばめられた毒。
そんな毒に、時にクスりと笑わされ、
時にグサッと胸に突き刺さった映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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