海辺のリア  
2017.09.14.Thu / 13:12 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






痴呆症を患っている老人。

この老人に対して、
憎み、疎み、捨てようとする長女。
罪の意識にさいなまれる義理の息子。
憎み、同時に愛している次女。

これらの思いは老人には届かない。
届かないというよりも、老人は偽りを信じている。
多分、それは老人が痴呆症を患う、ずっと以前から。

人と人との限りない断絶。
その断絶が哀しく感じられる映画。



痴呆症を患い、施設に預けられ、
そこを抜け出してきた、兆吉。
かつては、映画俳優だった老人。
兆吉は、自分の人生を、
他人のことなどお構いなく、自分の事だけを考えて、
思うがまま、望むがままに生きてきたのだろう。
だから家族が兆吉に抱く思いも複雑だ。

家族の中では、兆吉の事を一番に愛し、
心配しているであろう次女の伸子。
憎んではいるが、それでも愛している。
しかし、兆吉は伸子の事が分からない。
兆吉の記憶からは抹殺されているかの如く、
思い出すこともない。


反対に、兆吉を憎み、捨てようとしている由紀子。
痴呆症の老人の介護は大変で忍耐の要る仕事ではあるが、
由紀子が兆吉を憎んでいる理由は、それだけではない。
我儘に生きてきたであろう兆吉に、
翻弄され、振り回されてきたであろう由紀子。
だから兆吉が憎い。見捨てても構わないとさえ思っている。
しかし、兆吉は由紀子のことは憶えていた。
自分の妻と重ね合わせていたのかもしれないが、
それでも、信頼できる人として、憶えていたように見えた。


兆吉を捨てようとし、罪の意識に苛まれる義理の息子、行男。
一時は兆吉を守ろうとし、しかし、
自らが、取り返しのつかないこと、と言っていたことを
選択してしまう。
兆吉は行男の事をかろうじて憶えている。
行男は兆吉の事を大切にしたいと思っていることは本心なのだろう。
けれど、兆吉は、それほど深くは行男のことを思ってはいない。
役者を諦め、裏方に回り、挙句は拝金主義者に成り下がった。
そんな悪い印象しか持っていない。


三人が抱えている兆吉に対する思い。
それは兆吉には届かない。
届いていないというよりも、偽りを信じている。
それは、多分、兆吉が痴呆症を患う、ずっと以前から。
自分を本当に大切に思ってくれる人が分からない兆吉。
だからこそ、かれはリア王なのだ。
そして、彼が最後に一人きり、訳も分からないまま、
海に、その身を投じるのは自業自得なのだろう。
しかし、それでも、助けてくれる人は、いたのだろう。
本人には理解できていないとしても。

人と人との限りない断絶。
その断絶が哀しく感じられる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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