戦争のはらわた   
2017.11.02.Thu / 21:36 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






戦争は非人間的な行為。
しかし、一般の兵士たちは、
命ずるままに人を殺し続け、その精神を狂わせてゆく。
戦場とは、とても救いのない場所。
しかし、戦場には人を魅きつけて離さないほどの魅力がある。

戦場の救い難さを熟知し、
しかし、戦場の魅力に魅入られてしまった男。
男が最後に放った乾いた笑い声。
その乾いた笑い声に戦慄させられた映画。




ドイツにとって敗戦濃厚な東部戦線。
その最前線にいる、価値観が異なる二人の軍人。
仲間を大切に思い、生き延びる為に戦うシュタイナー曹長。
栄誉を欲し、規律を重んじるシュトランスキー大尉。
腐敗と腐臭が漂う最前線。
捕虜にした少年兵は、釈放した途端味方に殺される。
誕生日を迎えたばかりの戦友はあっけなく戦死する。
そして、負傷し病院に送られるシュタイナー。

両手を失い握手さえできない兵士。
肉は上官が占有し、病人には野菜だけが与えられる。
負傷し、まだ戦えないはずの兵士たちは、
しかし、強制的に戦場に送り返される。

死んだ兵士は放置され無残にもトラックが、遺体を引く。

救いのない戦場。
しかし、そこに自分の意志で戻ろうとするシュタイナー。
自分に寛容な上官でも、
栄誉欲に目が眩んだ上官でも、どちらも嫌いだ。
自分たちを死地に送り出し、人殺しをさせる命令を下すからだ。
シュトランスキーが勲章を取ろうが取るまいが、
そんなことには興味が無い。
けれど戦場には仲間がいる。
共に死地を乗り越え、頼り、頼られる仲間が。
そんな仲間の為に戦場に戻るシュタイナー。


鉄十字勲章を取る為にシュタイナーを置き去りにしたシュトランスキー。
命がけの撤退を強いられるシュタイナーと仲間たち。
その撤退は成功するかに見えた。
しかし、シュトランスキーの栄誉欲が仲間を惨殺する。

怒りに燃えたシュタイナーがシュトランスキーを殺せば、
この映画はシュトランスキーの価値観を否定し、
最前線の兵士の悲哀さが際立っただろう。
しかし、シュトランスキーを小隊にしたシュタイナー。
それは戦場の悲惨さや、自分の仲間たちの悲惨さを
シュトランスキーに経験さることが目的のようにも見えるが、
私には違うように感じられた。
なぜならシュトランスキーは嫌がっているようにも、
悲惨な体験をしているようにも見えないからだ。
そして、装弾方法を知らないシュトランスキーを笑うシュタイナーの声も、
シュトランスキーをあざ笑っているようにも聞こえなかった。
どちらかと言えば、シュタイナーの笑い声は楽しんでいるように聞こえた。


生き延びることが戦場での最大の目的。
であるならば、危険を避けるのが一番の得策のはずだ。
しかし、戦場に自ら赴くシュタイナー。
仲間が居るから、というよりも、
死の危険、そして、死の危険を乗り越えること、
その為の仲間との嘘偽りのない連携。
それらが、いつの間にか快感になったのではないのだろうか?
一度は自分の小隊を解散させたシュタイナー。
けれど、貴様の小隊は、どこにいるんだと問われ、
小隊が自分に取っては、とても重要なものであることを認識したシュタイナー。
だから目の前にいる男を自分の小隊に任命したのだろう。
そして、小隊として戦うことが、
必死になって自分の為に戦う者の存在が愉快でならなかったのだろう。

戦場の救い難さを熟知し、
しかし、戦場の魅力に魅入られてしまった男。
男が最後に放った乾いた笑い声。
その乾いた笑い声に戦慄させられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1536 / タイトル さ行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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