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  ハイ・ライズ  
2018.03.08.Thu / 19:34 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






ロンドン郊外にある高級タワー・マンション。
そこは人間界のあらゆるものを詰め込み、
人の社会の変化と、その行く末を見極める、
建築家の実験場。

完璧に設計したつもりだった。
しかし、どんなに完璧を期しても、
システムには、ほころびが生じる。
その、ほころびさえも実験の為の刺激なのかもしれない。

モラルは崩壊し、階級も秩序も無くなり、
暴力と乱交が蔓延するマンション。
けれど、そこに居心地の良さを見出す男。
何事にも縛られず、しかし、節度を守る。
憎しみや愛情にも従わず、
しかし、居心地が良い新しい世界。

もしかしたら本当に、
この世界は、あのように変わっていくのか?
そんな不思議な感慨を感じる映画。




ロンドンの郊外に建てられた高級マンション。
スーパーマーケットは無論のこと、
ジムやプール、生活に必要なあらゆる設備が完備された、
そこにある施設だけで生活が可能となる、
夢のような高級マンション。
そのマンションを設計した建築士、ロイヤル。
ロイヤルの設計意図は、
あらゆるものを詰め込み、
変化を起こさせるということ。
いわば、このマンションはロイヤルにとっては巨大な実験場なのだろう。

そこに越してきた医師のラング。
無用なトラブルは避け、規則は出来るだけ早く学び、それを守り、
しかし、他人とは距離を置いて交流する紳士的な男。


完璧を目指して設計されたはずのマンション。
しかし、人の行うことに完璧などはない。
電力の供給不足、水道の断水。
次第に狂っていく人々の生活。


フロアによる差別化。
パーティーは階級ごとに行われ、
施設の優先使用権も、階級によって定められる。
それによる直接的な生活への不便さは少ない。
電力も高階級の人に優先的に供給されているようには見えない。
停電が起こればどの階も暗闇となってしまう。
しかし、生活に不満が生じれば、
階級として差別されることに不満が募る。


ラングの教え子が自殺してしまった。
しかし、警察はやってこない。
別件でタワーの様子を見に来た警官もいたが、
ロイヤルが追い返してしまった。
恐らくはロイヤルの実験には邪魔なものだからなのだろう。
映画では示されてはいないが、断水も停電も、
この実験の為に引き起こされたように思えてならない。


警察が関与しないと分かった時、
モラルは崩壊し秩序も無くなった。
階級制度は維持できなくなり、
パーティーも、なんの役にも立たない。


あなたはタワーの最上の備品。
変化を受け入れ、環境に適応し、
しかし、他人を害せず、無理強いもさせない。
ラングは、この実験を行う上での、
貴重な先導者なのだろう。


低階級の先導者であるワイルダーがロイヤルを殺害した。
皮肉なことに、
マンションの象徴たるロイヤルが居なくなったことで、
最後の秩序が無くなり、
ロイヤルの実験は完成したのだろう。


他のマンションも失敗し、
しかし、そこに居る住人を受け入れ、
新しい世界で新しい生活を始める。
警察も居なければ、先導者も居ない。
しかし、そのような状況を受け入れば、
この世界を達観でき、愛憎に捕らわれず、
平穏で楽しい生活が始められる。

もしかしたら本当に、
この世界は、あのように変わっていくのか?
そんな不思議な感慨を感じる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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