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  オリエント急行殺人事件  
2019.08.29.Thu / 20:55 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






あまりに有名な原作。
そして、あまりに有名なミステリー映画のリメイク。
しかし、この映画はミステリーを描こうとはしていない。

裁くことができない悪が、放置されている。
大切だった人、愛していた人の命が理不尽にも奪われた。
けれど、奪った男は野放し状態で、
悪びれることなく、悪事を重ね、
その他の多くの人々を苦しめ続けている。

彼を殺害することは、正義なのか、悪なのか。
そして、復讐は心に平穏をもたらすのか。
一度、悪事に手を染めてしまえば、二度目、三度目は容易なはず。
そんな道から更生することはできるのか。

悪と正義の境目。
そんなことを考えさせられた映画。


とても豪華な俳優陣。
けれど上手には生かし切れていないように感じられた。
それぞれの見せ場が少なく、
そして、どちらかと言えばボアロ主体で創られたようにも見える。
それが、残念な映画。
灰色の脳細胞を持つ名探偵、エルキュール・ポアロ。
あるべき姿でない現実を見抜き、
それを推理し、本質に近づいていける男。
そして、この世には悪と善しかなく、
中間は存在しないという信念を持つ男。


映画の冒頭、教会から盗まれた貴重品。
誰が動機を持っているのか。誰が得しているのか。
そして、壁の小さな傷から、犯人を見事に見つけ出すポアロ。
それは、ポアロの人となりを見事に表現した冒頭。


オリエント急行で発生した殺人事件。
誰もが怪しくて、しかし、誰にもアリバイがある。
果たして誰が犯人なのか。
しかし、この映画では犯人捜しを中心に描いていないように見えた。
どちらかと言えば、
それぞれの乗客の隠された心の傷を丹念に描いているように見えた。

最後に明かされる事件の真相。
あまりに有名なので衝撃はない。
けれど、犯人を裁くべきか、許すべきか、判断に迷うポアロ。
ポアロの信念からすれば、法を犯した犯人は悪だ。
しかし、愛する者の為だけに行った復讐は悪なのだろうか?

犯人に銃を渡し、自分を殺せと迫るポアロ。
口封じの為に、そして、保身の為に、
更なる殺人を犯そうとすれば、それは悪。
しかし、仲間の為に死のうとした彼女は、
限りなく善に近い存在なのだろう。

悪なのに善、善なのに悪。
今度ばかりは、そのアンバランスを受け入れざるをえないのだろう。

復讐は何も救わない。
けれど、やむにやまれず殺人を犯した犯人たち。
恐らくポアロと出会えなければ犯人たちは、
心に闇を抱えて生きなければならなかっただろう。
しかし、
ここに殺人者はいない。居るのは傷を癒すべき人々。
その言葉に少なからず犯人たちは心を軽くしただろう。
そしてポアロは、それが最善と思い、その言葉を言ったのだろう。

悪と正義の境目。
そんなことを考えさせられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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