FC2ブログ
  解放区  
2020.02.06.Thu / 21:27 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






全く共感できない主人公。
クズと呼ぶにふさわしい男。

自らをどん底にいると叫ぶ男。
しかし、どん底と呼ぶには違和感が付きまとう。

人は簡単に転落してしまうのかもしれない。
それは、転落しても救う神がいるから。
転落しても生活する術が存在するから。
善意で助ける人もいるのだろうが、
落ちつつある人を食い物にする存在もあるのだろう。
しかし、彼らの未来は、将来は、、、、

転落してゆくことの恐ろしさ。
ゆっくりと自らの人生を壊してゆくことの恐ろしさ。
そんな恐ろしさが心に残る映画。



大阪市の助成金を使用して作成され、
しかし大阪市から内容修正指示を受け、
それを拒否し、助成金は返納。
そして公開が遅れた映画だそうだ。
大阪市はどのような意図で内容修正指示を出したかは知らない。
しかし、それは正しい判断だったように思える。
映画の冒頭で未成年者がタバコを吸うシーンを撮影したスヤマ。
それは批判されたが映し出された映像は真実でもある。
真実を取るべきか、それとも倫理が優先されるのか?
やはり倫理が優先されるべきではないのか?
多くの聴衆に向けて公開される映画ならば、なおさらだ。
見る側が正しく理解できなければ、それは害となる。
そして見る側に、そこまでの期待はできないというのが現実なのだろう。
そんなことも考えさせられる映画。
映像制作会社に勤める、スヤマ。
自らディレクターを務めたい。しかしADでくすぶっている男。

引きこもりの青年モトヤマにインタビューすべく、
モトヤマの心を開かせようと会話をするスヤマ。
しかし、現場を仕切るディレクターにパワハラ紛いに叱咤され、
スヤマは現場から逃げ出してしまう。
ここからスヤマの転落が始まるのだろう。

自身の正当性を強く主張することも無く、
ディレクターの圧力に屈し、逃げ出した。
主張しても無駄だったのかもしれない。
けれど、強く主張もせずに泣きながら逃げた姿から、
スヤマのダメさが見て取れる。

単身大阪の釜ヶ崎に乗り込み、自分が思い描いた作品を制作しようとするスヤマ。
なぜかは明確に描かれてはいないが、
スヤマはモトヤマを仲間にする。
将来に対する展望もないままに。

スヤマが映像を制作したいという動機は、
若者のリアリティーを描きたいとか、
この世界に真実を伝えたいとかという理由ではない。
自らが成功したいという自己顕示欲故なのだろう。
行きずりの女に騙され、総てを失い、モトヤマにたかるスヤマ。
しかし、スヤマの本性に気付きつつあったモトヤマに断られてしまう。
そして、先輩ディレクターと似たような方法でモトヤマを脅すスヤマ。
先輩ディレクターの手法が間違いだと思っていたわけではない。
先輩ディレクターが自分を認めないのが間違いだ、
と思っていたということなのだろう。


スヤマの元を離れたモトヤマ。
追い求めていた被写体が獄中に居ることを知ったスヤマ。
しかし、二人とも釜ヶ崎から離れない。
映画で見る限り釜ヶ崎はとても懐が広い街だ。
訳アリの男でも日雇いの仕事を得ることができる。
炊き出しがあって、食べることもなんとかなる。
そして、格安な寝ぐら。
それらは人々の善意で施されているのだろう。
しかし、善意には限度がある。
彼らが今日を生きることは可能とはなっている。
しかし、将来の事までは保証していない。
それは当人の責任であり、
それを考える猶予をあたえているだけなのだ。
しかし、将来の事など考えていないスヤマとモトヤマ。
それは皮肉なことに今日を生きられるからなのだろう。


自らをどん底に居ると叫ぶモトヤマ。
しかし、この言葉には違和感を感じざるを得ない。
なぜなら彼には母親がいる、弟がいる。
自分を軽視して憎んでいても守ってくれる存在が居る。
そして、どん底とは、どんなに足掻いて努力しても、
報われない絶望的な状況をさす。
モトヤマには自身が気付けば希望が存在する。


遂にはヤクに手を出すスヤマ。
理由は明確に語られてはいない。
作品にリアリティを求めての結論なのか?
単なる現実からの逃避なのか?
被写体がヤクで捕まっているためなのか?
それとも、働いた先でのたわごとにも似た助言のせいなのか?

取り上げられることも考えず撮影を敢行し、
しかし、ビデオを奪われそうになる。
なにも考えていない様子に、あぜんとさせられる。



彼らはいったいどうなってしまうのだろう。
希望を見出して、あの街を旅立つのか?
それとも居心地の良さに引きずられあの街に留まるのか?
転落してゆくことの恐ろしさ。
ゆっくりと自らの人生を壊してゆくことの恐ろしさ。
そんな恐ろしさが心に残る映画。

* テーマ:最近観た映画 - ジャンル:映画 *
No.1761 / タイトル か行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.