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2005.10.13.Thu / 20:28 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




役割を与えられ、状況が設定されれば、
それまでの人格が失われ、人はいかようにも変わってしまう。
人はどこまでも、残酷にも、卑屈にもなりうる。
しかし、そこにいたるまでの過程は、
予想以上に深みのある映画でした。

最初は、わけ隔てない、同じ人間同士だったはずなのに、
看守と囚人に分けられる被験者達。
状況が設定され、集団に別けられたが故に始まる
集団と集団との対決。
相手になめられれば、やられてしまう。
いかに相手側の集団から優位に立つか?
そんな緊張が争いをエスカレートさせてゆきます。

しかし、いつしか集団と集団との間の憎しみが、
個人と個人の憎しみに変わってゆきます。
そして、それは個人同士のプライバシーへの攻撃。
そして、看守が圧倒的に優位に立ったとき、
状況が安定してくると、
集団のもとに一致団結していたはずの個人が、
皮肉なことに、様変わりを見せて来ます。

優位な集団の中にあっても、集団の意思には逆らえない者。
集団の力を個人の力と錯覚する者。

相手側からの押し付けを拒む者。
同じ集団に属していても波風を立てる者を忌む者。

狂気にほんろうされながらも、
主人公がかろうじて正常を保っていられたのは、
外界とのつながり、つまりドラのことを、
強く想っていたからなのでしょう。

しかし、すでに定まってしまった流れを、
変える力は、誰も持っていませんでした。

そんな中でくすぶり続ける
歯止めの利かない闘争心、復讐、残酷さ。
ついに始まる全面戦争。

戦争とは、このようにして起こるのでしょうか?
ファシズムとは、このようにして成り立つのでしょうか?。

自分は大丈夫という人間は、
この映画の顛末を知っているから、そう思えるのでしょう。
しかし、そうは、ならないと思っていても、
一歩狂気の世界に踏み込めば、
この流れには、個人では、
到底抗うことは出来ないのではないのでしょうか?

役割と状況の設定による個人の喪失というには、
あまりにも濃い内容。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.324 / タイトル あ行 /  comments(4)  /  trackbacks(2) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from Carolita -

この映画、公開当時映画館で見ました。
ミニシアター系の小さな映画館で上映されていましたが、
観客は皆、次第に高まっていく緊張感に身じろぎもできずにいたのを覚えています。
本当にその通りですよね。
流れに逆らえない個人が、大きな流れに呑み込まれてしまう過程=戦争が成り立っていく過程の縮図のようでもあったと、
記事を記事を拝見しながら思いました。
実話を基にしているからこそ、う~ん、ますます考えさせられますね。

2005.10.16.Sun / 19:40 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

見たんですね。
ちょっと、私には、そんな勇気ないかも、、、
この映画の人たちは西洋人で、私達は日本人だから適応能力があって、こうはならないだろうという感想を見ましたが、でも、Noといえないのも日本人。なんか、無自覚の元に真っ先にこういう状況を招きそうで怖い思いもしますね。
多分、脚色はされているのだと思いますが、実話ってのも怖いものがありますね。

それじゃ、また。

2005.10.18.Tue / 22:32 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from YAN -

ヤンさん、これは人間性の変化を細かに描いていた作品でしたね。
映画の主人公だから、囚人側にあっても抵抗して正常を保って
いられたけど、実際にはあんなに自分を強く持っていられる人って
なかなかいないんじゃないでしょうか。
人間はみんな弱くて、強い力に屈してしまうものだと思います。

実験でそれが分かったんだから、
戦争にならないように、虐待が起こらないように、
いじめをしないように、歯止めを考えないといけませんよね。

2008.03.26.Wed / 15:17 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんにちは。

 私には、主人公が一応塀の外に恋人らしき人がいたために、その繋がりによって、かろうじて心のバランスを保っていられたように思えましたが、ただ、それだけでバランスを保てるのは難しく、確かに、「映画の主人公だから、」とも思えます。環境に左右されず、平常心を保つのは、なかなかに難しいことなんでしょうね。だからこそ、歯止めが必要なんでしょうね。

 それじゃ、また。

2008.03.28.Fri / 15:50 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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