宇宙戦争  
2006.01.12.Thu / 21:55 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




この映画は、宇宙からの侵略を描いた映画ではないのだろう。
戦争における、侵略される側の悲惨さや絶望、そして、
理不尽にも戦争の犠牲になる人々を描いた映画なのだろう。

確かに形としては、トム・クルーズ演じる、
非常時に対しても、何も決めることが出来ない、
情けなくも頼りないダメな父親が、
必死に娘を守り、息子を認めることで、父親としての愛を取り戻す。
たとえ、無力であっても、父親としての威厳がなくとも、父は父となりえる。
そんな家族愛の話になっている。
しかし、それ以上に印象的なのは、戦争の悲惨さ、残酷さ、そして絶望。
隣を逃げている人間が無作為に殺される様。
墜落した旅客機。川を流れるたくさんの死体。
地獄に向かって突き進むがごとく、燃えながら走る列車。
空から落ちてくる無数の空の衣類。
それらは、昨日までは生きていたはずの、被害者。
必死に生きることを求めても、
愛する人を守りたいと願っても、あまりにも無力な人々。
生と死の決定は、理不尽にも、運命や偶然によってのみ決められてしまう無常さ。

軍隊と共に、最前線に駆け出していった息子。
息子が見届けたかったには、自分達の絶望的な未来。そして絶望的な運命。
それは、父親が懸命に隠している真実、しかし、息子はうすうす感づいている。
だからこそ、父親の配慮を超えてでも、知りたいのだろう。
この、知りたい、見届けたいという気持ちが痛いほど、よく分かる。
父親は、この時初めて息子を一人前と認め、
絶望を直視することを許したのだろう。

人の血が地面に撒かれる映像。
それは、まさに、人類が容赦なく、
略奪者によって、命を搾取されている様。

切望的な、明日なき戦い。
人類は滅びるしかないと悟った時、
自分達は植物の肥料になるしかないと絶望した時、
それは、あたかも世界が最終核戦争を実施し、
生き残ったわずかばかりの人類が、
避難シェルターで行うであろうことを描いた物語のように感じた。
世界に、救いは一片のかけらも残っていないことを、
知ってしまった後の絶望した人々の物語なのだろう。

せっかく共に生き残ったのに、生き延びるためには、
考え方が違う人間を殺さなければならないのか?
生き延びるためには、一台の車を取り合い、
同じ人であるにもかかわらず、殺しあわなければならないのか?
侵略者から生き延びるためには、
人間の尊厳を捨てなければならないのだろうか?
悪いのは、そのような選択をさせる極限状態を作り出す侵略者なのか?

最後にはウィルスによって滅びる侵略者。
それは、人類が長い間かけて、先祖の死をも糧として、
地球と共生できるようになった結果なのであろう。
新参者であり、略奪者である侵略者は、
その土地に生きる権利を有しては、いないのだ。
その権利は、
たとえ正規の軍隊であっても
それがテロリストであっても
奪うことが出来ないものなのだろう。
それを奪うことは地球自身が許さないのであろう。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.352 / タイトル あ行 /  comments(2)  /  trackbacks(2) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

この作品はヤンさんのようにも見る事ができますね。
略奪者が容赦なく人類の命を搾取していく様子・・・
それに対して無力で、逃げるしかできない人々・・・
このあたりに確かに絶望感が出ていました。

だけど最後のトムの妻の家族の様子は、
それまでとあまりにも違う空気が漂っていて
絶望感とは程遠かったですよね。あれには気が抜けた。。。
息子も一人でちゃんと生き延びていたし。
最後のこういうまとめ方がないほうが良かったですね。

2008.10.20.Mon / 14:38 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

 確かに最後のさわやかな雰囲気は違和感ありありですね。息子が生き残ったのも違和感が拭えませんでしたが、最後に抱き合う父と息子に、なんだか、ホロリともさせられました。父親の保護を飛び出し、父親を乗り越えて男になった息子と抱き合う姿が印象的でした。それでも確かに違和感ありありでしたね。

 それじゃ、また。

2008.10.22.Wed / 22:44 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY
普通の人目線のパニック映画でした。 トム・クルーズが本当に必要だったのか? 監督:スティーヴン・スピルバーグ       原作:H....
2008.10.20.Mon .No262 / Rocking Chair Blog / PAGE TOP△
先日原作の小説も読んだし、本作主演のトム・クルーズの「ワルキューレ」を観たし、本
2013.08.10.Sat .No585 / はらやんの映画徒然草 / PAGE TOP△

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.