ローレライ  
2006.01.19.Thu / 22:27 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。


生きることを決めた者たちも
未来のために死に逝く者たちも
等しく彼らは未来の希望
自分の大切なものを守り抜き
まだ見ぬ未来を信じる強き勇者


原作は未読です。
欠点を沢山持った映画です。
現実味がない設定やストーリー上の多くの矛盾、
不要じゃないかと思われるシーン、チープなCG、
甘い時代考証と戦時下とは思えない緊張感が足りない雰囲気、
主要キャラクタの掘り下げが少ない等。
しかし、私にとってはいい映画でした。
守るべきものを持った者たちが、未来を勝ち取るまでの物語。
特に役所広司さんの演技は、絶賛もの。


この映画の主題は、
尊い犠牲のものに得た現在であるならば
今を大切に生きろ、ということにあるのかもしれません。
しかし、私には違うようにも感じました。

守るべき物を持った者たちが、あきらめずに最後まで戦い抜く姿。
まだ見ぬ未来を信じる強い意思の力、そして、
目的を達した後の、満足げな誇り高き彼らの顔がすばらしい。

自己犠牲や特攻、専制政治などは、映画としてはかなり、危うい題材です。
多くの人が見る映画だからこそ、
このあたりはキチンと区別して描かないと、大変なことになります。

この映画では、最後の戦いは各自が自分の意思で決めました。
自由意志により、退艦した者もいて、否定的には描かれていません。
このあたりにも、この戦いが自己犠牲ではなく、
自分達が決めた生き方を最後までまっとうしたことを描きたかったのかもしれません。
(しかし、洗脳教育という話を持ち出されると、ちょっと危ういかもしれませんが。)
さらには、折原と絹見艦長の会話にも現れているようでした。

大人の起こした戦争に、最後まで、君たち若者の力を借りた。すまなかった。
自分達は、自分以外のなにか見えないものに身をゆだねて生きてきた。
そんな生き方しかできなたっかった。
だが、君たちは、自分の目で自分達にとっての大切なものを見極めて欲しい。
そして、それを守り抜くんだ。

無数の艦艇で包囲網をしくアメリカ艦隊に対して、
ローレライ無しで作戦が成功する確立はゼロに等しく、
絹見艦長は、軍の命令なしでも、東京を救うことを決意した時、
綺麗事だけでは、この作戦は実行不可能だと理解していたのでしょう。
この時点で、魚雷の信管を抜くことも、
退艦を希望する者を降ろすことも、
最後には、できれば若者たちを切り離すことも、
彼なりのけじめとして、考えていたのだと思います。
特攻を忌み嫌い、部下に生きて帰還しようと約束した、
絹見艦長にとっては、苦渋の選択であったかもしれません。
しかし、彼の決断は、見えないものに身をゆだねて生きてしまったことに対する、
反省と後悔、そしてけじめなのでしょう。
直接的に、帝国主義や専制政治を指摘していないのは、
専制政治以外にも、見えないものに身をゆだねてしまう危険が、
あるからかもしれません。

そして、この映画は、すべての人に、
その人にとっての大切な物を見極めろと、問いかけています。
それを守り抜け、と。
それは、いったいなんなのでしょうか?
それは、当然個人に依存するものかもしれません。
人に強制されたり、偽物を信じたりするのではなく、
自分の目で見つけ、見極めることが大切なのでしょう。

最後まで、未来を信じ、生き残る者たちの可能性に賭け、
自分の生き方を貫いた絹見艦長。
未来に絶望し、生き残った者たちの可能性を否定した浅倉大佐。
二人の対比も心に残るものがありました。

そして、主演として、一本の映画を支えきった役所広司さん。
もはや、上手いとか、下手とか、そういうレベルを超えた演技。
それだけでも、すばらしい。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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