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  ホテル・ルワンダ  
2006.05.11.Thu / 21:14 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




知らなかったこと自身が罪なのかもしれない。
助けを求める手を見過ごしていたことが、
恥ずかしいことなのかもしれない。
だったら、知ってしまった私達には、いったい何ができるのか?
そんなことを考え出すと、とても重い映画。
そして、役者一人一人の、
実話に基づいていることを意識せざるを得ないほどの、
臨場感溢れる演技が素晴らしい。

映画の冒頭、ポールはよき家庭人であり、
仕事も有能にこなす支配人。
世情は不安定ながらも、家族のことを一番に考え、
隣人の災難を見過ごしてしまう。
それは、仕方のないことしれない。
冒頭のポールは、
この惨状と無関心である、今の私達となんら、
変わりがなかった。

今まで受け入れてきた西洋文明。
葉巻、スコッチ、ビール、そして賄賂。
厳しい現実が自分の身に降りかかり、
それらが、まったく意味をなさないことに気づかされる。
政治的理屈を主張したいわけではない。
どちらが正しいかを言いたいわけではない。
ただ、生き延びたい、家族と共に。
目の前で、今を生きている命と共に。

命を懸けた駆け引きの末、なんとか生き延びた彼ら。
勇気があったとか、正義に目覚めたというわけではないのだろう。
純粋に家族を、隣人を助けたいという想いだけが、
彼を、人として当たり前の行動に駆り立てただけなのだろう。
だったら、私達にも何かが出来るのかもしれない。


さまざまな困難に、必死で対処するポール。
それでも、死に逝く命のわずかを、助けたに過ぎないという現実。
映画に映し出されるのは、
道に横たわる多くの死体。
明日の命も分からない難民達の歩く姿。
そして、あのホテルが西洋人がオーナーの4星ホテルでなかったら、、、
ホテルのオーナーが、ポールを見捨てたとしたら、、、
そう考えると、とても恐ろしい。

ポールが家族を取るのか、ホテルに残るのかを選択された時の気持ち。
そして、ホテルに残ることを選んでしまったポールの気持ち。
それを責める妻の気持ち。すべてが痛いほどによく分かる。
自分であったのなら、どうしていただろうと考えると、
気持ちがとても重くなる。

この理性を超えた大虐殺は、しかし、
西洋がもたらした差別が元になっている。
普通であれば、何の違いもないフツ族とツチ族。
彼らを分けたのは、西洋がもたらした植民地支配。
ならば、我々がなんとか解決していかなければならない問題のはずなのだ。

興行的理由で公開が今まで遅れてしまった映画。
この事実だけでも、とても恥ずかしいことだ。
それは、国益に沿わないからといって、彼らを見放した国際社会と同等だ。
しかし、私のような田舎に住む者でも見ることが出来たという事実。
そのことに感謝したい。そのこと自身が、とてもうれしい。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.386 / タイトル は行 /  comments(4)  /  trackbacks(2) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from くりりん -

本当に思い映画ですね。
でも映画自体はとってもわかりやすく作ってあったと思います。
遠い地の内戦なんて、自分たちにはまったく無縁のこと・・・と思っている人が大多数いる中、命をはってその地に留まり、救援している人たちの存在も印象に残りました。

2007.02.03.Sat / 11:21 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

 確かに、とても分かりやすい映画でしたね。分かりやすいからこそ、より、心に重く響くのでしょうね。「世界の人々は映像を見てかわいそうと思うけど、そのままテレビを見ながら食事を続ける」というのも、分かりやすいという以上に、痛いところを指摘されてしまい、それも重さに拍車をかけている映画でした。

それじゃ、また。

2007.02.03.Sat / 23:26 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
いつも自分が観た作品の事ばかりで、すいません。

この映画は本当に観て良かった、知って良かったと思いました。
民族紛争は、これまた西洋にも責任の一端があったんですね・・・
これを観て突き刺さった感動は忘れないと思います。
絶対に忘れたくないですね。

2007.12.08.Sat / 17:36 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

こんにちは、YANさん。

>いつも自分が観た作品の事ばかりで、すいません。
いえいえ、私としても以前見た映画を思い出せてうれしい限りです。特にこの映画は、忘れてはいけない映画ですからね。

「忘れたくはない映画」
確かにそうですね。
二度と起こしてはいけない悲劇。でも、多分、世界のどこかでは、規模は違えども、似たような悲劇が繰り返されているのかもしれません。だから忘れてはいけない悲劇なのでしょうね。

それじゃ、また。

2007.12.09.Sun / 16:27 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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