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2006.05.18.Thu / 22:08 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




幸せに暮らしてきた、一見平凡な男が、
実は秘められた過去を持ち、
それに向き合わなくてはいけなくなった。
いろいろな映画で何度も使われ続けたストーリーです。
ありきたりといえるのかも知れません。
このような映画では、主人公は最後に家族に温かく迎えられるとか、
刑に服して、自らの身を清算するとかが、常套なのですが、
あえて、答えは見せない映画。
だからこそ、いろいろなことを考えさせられる映画。

犯してしまった過去は清算できないのか?
暴力ですべては解決はできない、だが、
避けられないのであれば、力でしか解決できないのであれば、
その時、人はどうすべきなのだろうか?
はたして、正当防衛ならば許されるのか?
ならば、正当防衛と暴力の境とは?
愛する家庭のために振るった暴力で、
逆に愛する者たちから拒絶される苦しさ。
そして、暴力は連鎖する。
今までの生活を一変させる。その恐ろしさ。
懸命に愛してきたはずの家庭なのに、
それでも、過去から逃れられない。
秘められた過去が明らかになった時、
懸命に守ってきたはずの家庭は、
もろくも崩れてしまう。

一見するとトムの暴力は正当防衛。
しかし、その身のこなしの見事さ。
そして、目に宿る明らかな殺意。
やはり、彼は人殺しなのか?
解決方法として殺人を選んでしまう彼は、
やはり、人殺しジョーイなのか?

いじめられっ子の息子のジャック。
暴力を避けるために、自分を卑下し、
争いごとから身をかわしていた。
それは、正しい行いなのだろう。
しかし、相当の忍耐を抱え込むジャック。
父の正当防衛に触発され、
ついには、いじめっ子をぶちのめす。
大切な父や恋人を罵倒されたから、それを守りたかったから。
暴力では何も解決しないはずなのに。
正当防衛ならば、許されるのか?
しかし、果たして、それは正当防衛なのか?

最愛の夫であるトムを受け入れていいのだろうか?
自分の知っているよき家庭人、トム。
そして、自分の知らない殺人鬼、ジョーイ。
どちらも同じ一人の男。
その狭間で揺れ動くエディー。
階段でのセックスでは、トムを受け入れたかに見えて、
その直後に拒絶する。
自分でもどうしていいのか分からない、
どうしようもない気持ち。

兄に、「もう終わりにしたいんだ、どうやったら償える?」
と問いかけて、やはり、暴力でしか解決しないことを悟る。
その哀しさ。

暴力を振るってまで守り通した家庭に帰ってきたトム。
彼のすがるようなまなざし。
頭では分かっていても、生理的に人殺しは受け入れがたい妻のエディー。
ラストの彼らの苦悩がとても痛い。

トムとジョーイを、見事に演じ分けた、
ヴィゴの演技が素晴らしい映画でした。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.387 / タイトル は行 /  comments(4)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from のるぶ -

はじめまして。
ご感想を興味深く読ませていただきました。
わたしは、きょうDVDでこの作品を見ましたが、ヴィゴさん難しい役を好演していました。思っていたよりも主人公をヒーローっぽく描いていたのと、お兄ちゃんのウィリアム.ハートがギャングにもかかわらずあっけなく殺されたのが、ちと残念でした。しかしながら面白い一本にかわりありません。
また遊びこさせてもらいますので、ヨロシク。

2006.09.09.Sat / 18:34 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

はじめまして。
つい最近劇場で見たと思ったら、すでにDVDになっているのですね。早い。
 ヴィゴの、特に目の演技がすばらしいかった。ウィリアムハートは、確かに、すぐに死んでしまいましたね。ですが、さすがの名演技。アカデミーの助演男優賞にノミネートというのも、わかる気がしました。

それじゃ、また。

2006.09.10.Sun / 22:15 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
前にヤンさんからもお勧めがあったので観てみました。
思ったよりもクローネンバーグらしいグロさはありませんでしたね。
確実に仕留めるすごさはあったけど。
正統的なサスペンスドラマに仕上がっていて、
考えさせられるラストになってました。

正当防衛なのかどうか判断が難しいんですが、
結局、暴力は受けた者が絶対に忘れないんだと思います。
だから過去から逃れられないのでしょうね。

2009.10.13.Tue / 17:30 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

 今から考えると、凄い映画を進めていたんですね。それでも、楽しんで(?)いただけたようで、何よりです。

 ビィゴは、LOTR以前は、まったく知らなかった俳優だったのですが、素晴らしい演技をする人ですね。この映画でも、善悪の切り替わりが素晴らしいです。

 「暴力は受けた側が忘れない」というのは、その通りですね。だからこそ、最初に暴力を振るってしまえば、過去からも、その悪循環から逃れられなくなるのでしょうね。なかなかに考えさせられる映画です。

 それじゃ、また。

2009.10.13.Tue / 21:13 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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「イースタン・プロミス」を観た時に、 同じクローネンバーグ監督とヴィゴ主演だからという事で、 いろいろな人から勧められた作品。 家庭...
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