2006.06.08.Thu / 21:56 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




誰かに認めてもらいたい。
そんな飽くなき要求が自らを突き動かし、
しかし、自らを追い詰める。
そして、本当に自分を認めてくれた人を、
欺瞞と絶望の中で忘却してしまう。
自分の芸術を愛する強い心と、しかし、
人の批評を気にせざるを得ない弱い心。
それは、彼が持つ劣等感と自尊心。
そんな人だからこそ、
あのような芸術を生み出すことが出来るのだろうか?
そして、人の幸せとは、幸せになるための条件とは、
いったいなんなのだろう。
一人の画家の生涯を描き、
さまざまなテーマが織り込まれている映画のように感じましたが、
私には、そんなことを感じた映画でした。
劣等感に、さいなまれるボロック。
しかし、その劣等感は、実は他人に認めて欲しい、
名声を手に入れたいという、自尊心の裏返し。
人の評価を気にし、しかし、自分の芸術は曲げたくない。
自分が本物であることを、強く願い、
しかし、それを信じ切れてはいない弱い心の持ち主。

ポロックのよき同士となった妻のリー。
人並みの甘い新婚生活や育児などといったものは二人には存在しない。
その代わりにあるのは、
ボロックの才能を開花させるという、二人の共同作業。
これも、愛のある夫婦の姿といえるのかもしれないが、
しかし、リーは、ボロックの心の弱さを、そして、
その原因を理解していたのだろうか?
確かにボロックが名声を手に入れたのはリーの献身のおかげだろう。
だが、リーが愛していたのはボロックの才能であり、
作り出す作品の数々であったのかもしれない。
いや、リーは、彼女なりにボロックを愛していたのかもしれないが、
二人がお互いの価値を認め合った芸術家であり、
その目的が同じであったことが悲劇であたのかもしれない。

名声を手に入れ、それを家族に自慢し、しかし、それでも満足しないボロック。
雑誌に取り上げられても、自分が偽者ではないか、という疑念は、頭から離れず、
やがては、壁にぶち当たり、作品を描くことも止め、
文字通り、自滅してしまう。

良き理解者に恵まれ、自分の才能を、一時的とはいえ、
世間に評価され、名声を手に入れたボロック。
しかし、彼は幸せだったのだろうか?
彼に足りなかったもの、安心感や、やすらぎ。
そんなものを与えてくれる人が伴侶であったのなら、
あのような死に方はしなかったのかもしれない。
それでは、しかし、彼の才能は開花しなかっただろう。
果たして、どちらが幸せなのだろうか?
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.393 / タイトル は行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from くりりん -

 確かに見ているのが辛くなるほど、そんなに自分を追いつめなくても・・・と思いましたが、多くの伝記的映画がそうであるように、心の平穏を求め、ゆったりふんわりしているようでは人の心を突き動かすモノを創作したり、偉業を成し遂げたりできないんでしょうね。
 でも物語としてはあまりにも苦しいので、こういった映画は本当は好きではないのですが、エド・ハリスということでウットリしてみてしまいました。家族からの疎外感にはしんみり。
 創作する(まして人に感動を与えるほどの作品を)ということは、命を削って自分を追いつめないと生まれないという悲しい真実ですね。

2006.06.11.Sun / 17:42 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

遅レスですいません。
本当は、私も好きになれないタイプの映画でしたが、なんといってもエド・ハリス自身が監督した映画ということなので、見てしまいました。
 痛々しい映画でしたが、さすがにエド・ハリスの演技は素晴らしく、特にポロック 本人と思えてしまうほどの筆裁きが圧巻でしたね。

それじゃ、また。

2006.06.15.Thu / 22:51 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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制作2000年アメリカ監督:エド・ハリス出演 エド・ハリスマーシャ・ゲイ・ハーデンエイミー・マディガンstory1941年ニューヨークアルコール依存症を抱えた無名の貧乏画家ポロックと、リー・クラズナーは出会った。お互いに強く引かれあった2人は一緒に暮らし始める。画家..
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