エターナル・サンシャイン  
2006.07.16.Sun / 23:55 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




忘れてしまいたい思い出。
忘れたくはない思い出。
さまざまな魅力と、さまざまな欠点。
語りたくはない恥ずかしい過去。
そんな、すべてをひっくるめ一人の人間。
そのすべてを受け入れることで、
本当の恋愛関係ははじまるのでしょう。
童話のようなストーリー展開の中に、
恋愛の真実が沢山詰まった映画。

失恋の痛手から立ち直るため、
過去を忘れようとしたカップル、ジョエルとクレメンタイン。
しかし、本当に忘れたかったのは、
過去の思い出ではなく、心の乾き。
だからこそ、思い出を消したはずなのに、
再び巡り会おうとしてしまう二人。
それとは、逆に、他人に成りすまし、
過去の思い出をなぞろうとしたパトリック。
しかし、それは失敗してしまう。
クレメンタインが欲していたものが、
過去の思い出では、ないからなのだろう。


この思い出だけは消さないでくれ、
しかし、そんな都合のいいことは出来るわけがない。
彼女とのすべての思い出と共に生きるのか、
彼女をすっぱりと諦め、そのすべてを忘れるのか、
選択肢は、その二つしかない。


自分は空っぽの人間、語るべきものを何も持たない。
しかし、実は持っている恥ずかしい過去
図らずも母親に見られてしまった苦い思い出。
いじめっ子にそそのかされる愚行。
しかし、ジョエルの脳の中の彼女とはいえ、
クレメンタインは、笑いながら、すべてを受け入れてくれる。


忘却は、より良き前進を生む。
幸せは無垢な心に宿る。
忘却は許すこと。
しかし、この映画ではこれは真実ではないのだろう。
忘れてしまい、しかし、再び同じ過ちをおかしそうになるメアリー。
他人事であれば、真実であった言葉も、
自分の身に降りかかれば、意味をなくすのだろう。
同じ過ちを、二度とは繰り返さないために、
失った過去と対峙することを選択する。
そして、それを皆にも勧め、求める。

同様に、同じ失敗を繰り返そうとしていたジョエルとクレメンタイン。
相手を互いに、けなし、ののしるテープの声。
相手からの罵声により、相手の魅力をも、再び見失おうとしていた。
しかし、そんな欠点も含めて一人の人間。
そして、それ以上の魅力をお互いの中に見出している二人。


将来再び二人に訪れるであろう倦怠期。
そんな倦怠期の中でさえ、
静かに相手への愛情を確認できるかもしれないと、
思えるようになった時に、
本当の恋愛関係は始まるのかもしれない。


失われゆく思い出の中で、
失われゆくからこそ、失いたくはない相手への想い。
「サヨナラを言ったことにしましょう。」
失われゆく思い出の中でさえ、「今を楽しもう。」
それらの言葉は、誤った過去に対する許しの言葉なのかもしれない。
そして、失おうとしてみて、初めて実感できる相手への愛情なのかもしれない。
捨てようとしたのだけれど、その中にこそ、人生の宝があったのだろう。
感性に響き、理性に訴えかける、味わい深い映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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COMMENT TO THIS ENTRY
- from モモ太 -

映画の予告からはもっと違うストーリーを想像していました。
でもこれはいい意味で裏切られましたね。
記憶を失ってもまた出会う二人に、普通ならご都合主義を感じるところなんですが、この作品の場合はまったく感じませんでした。
脳が互いを忘れてしまっても、心は忘れてなかったんだと・・・。
こういう映画、また観たいです。

2006.08.06.Sun / 01:17 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

確かにそうでしたね。
ご都合主義的展開を、実に違和感なく、しかも、逆にひねってサスペンスにするあたり、さすがチャーリー・カウフマン。心を扱ったテーマに対して感性と理性の両方に働きかけるという作風が、映画の可能性という点だけにおいても、素晴らしかったです。
 最後に、「OK」というシーンも、ああ、そうきたか、、って感じで素晴らしかったです。

それじゃ、また。

2006.08.07.Mon / 22:40 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from くりりん -

恋しているということは「未練」ですね。未練をこんな風に描いた映画は初めてです。素人っぽい雰囲気の映像も美しかったです。
ヤンさんのところにTBできないみたいなのです。「リンダ~」と「浮雲」これもだめかな~?

2006.08.15.Tue / 23:21 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

私のところからはTB出来ました。
それと、FC2使っている他の方からも出来ました。変な設定しているつもりはないのですが、すいません。
未練かも知れません。赤い糸かもしれません。相手がすでに自分の一部なのかも知れません。でも、素敵なものを見せてもらった気がしました。

それじゃ、また。

2006.08.17.Thu / 21:04 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ガオ -

ヤンさん、おひさしぶりです。
『エターナル・サンシャイン』パワーが
うれしくて飛んできてしまいました(笑)
そうですね、まさに感性に響き
理性に訴えてくるものがありますよね。
ただのハッピーエンドにしないところが
たまらなくいいです。
何度も繰り返して観ているのに
ぜんぜん飽きないんです。
むしろ、どんどん愛情がわいてきちゃう。
そして、今夜、ヤンさんの素敵なレビュー読んだら
また観たくなっちゃったです。

そんなこんなでTBさせてくださいね。
お礼にチキン山ほどおいていきますので(笑)

2007.02.09.Fri / 20:41 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

 いやー、ガオさんのチキン、めちゃおいしいですよ。そして、この映画も味わい深いですね。ラストの「OK」って、こんな風なラストを全然想像できずに、ああ、こんな風に終わるのか、って感じですばらしいかったです。とても映画っぽい映画でした。「さよならを言ったことにしましょう。」なんて、なんかね、とても、いとおしくなる台詞でしたよ。

それじゃ、また。

2007.02.11.Sun / 01:30 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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