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  バッド・エデュケーション  
2006.08.31.Thu / 21:15 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




アルモドバル監督の自伝的な映画だそうです。
私には、彼がなぜ、映画を撮り続けるのか、
彼を突き動かす情熱が垣間見られたような映画でした。

美しいものは、その美しさゆえに、簡単に崩れてゆく。
醜悪になってしまった存在は、しかし、
かつては美しいと感じたはずの存在。
そんな存在に対する、3人の男たちの、
欲望、愛憎入り乱れた、感情。
そんな彼らの顛末を描いた映画。


無垢で汚れ無き少年時代。
しかし、美しいがゆえに、引き裂かれる人生。
エンリケをかばうため初めて体を売ったイグナシオ。
この瞬間、信仰を失ってしまった、イグナシオ。
大人の正体を知ってしまった、その瞬間。
そして、イグナシオの無垢も、その美しさも、
この日を境に失われたのだろう。
弟であるファンはきっと、兄がそれでも、好きであったのだろう。
醜悪で、母親の気持ちを踏みにじる兄、そして、
自分の人生から消去しなければならない存在であったとしても、
兄としては、好きであったであろう存在。
だからこそ、兄の映画を撮ろうと思ったのだろう。
映画の中ではハッピーエンドになるはずであった。
しかし、事実同様のバットエンドを演じきった後に泣きむせぶファン。

兄を騙り、自分に近づいてきたファンを怪しむエンリケ。
事実、彼はイグナシオではない。
しかし、本当にエンリケは、それを本能で感じ取ったのだろうか?
美化された過去の初恋。そして目の前にいる現実としての存在。
両者を結びつけることが、エンリケには出来なかったのではないのだろうか?

エンリケはイグナシオを忘れていた。
しかし、イグナシオはエンリケを忘れてはいなかった。
エンリケのために、彼に再び出会うために、
ヤクをやめようとするイグナシオ。
しかし、ヤクをやめれば昔の美しさを取り戻せるのだろうか?
だが、エンリケはイグナシオを忘れていた。
偽者だと知りつつ、ファンとの日々を過ごしたのは、
エンリケの自虐的行為に思えてならない。
それは、忘れていた自分が許せないから。

不幸か、幸運なのか。
美しさを失ったイグナシオと出会うことがなかったエンリケ。
もし、彼らが出会ったとしたら?
美しさを失ったイグナシオ。
それでも自分を忘れてはいなかったイグナシオ。
自分に出会うために、ヤクを止めようとまでしたイグナシオ。
それでもエンリケは受け入れることが出来たのか?
それとも、マノロ神父のように、恋愛の対象からは、
切捨て、外してしまっていたのだろうか?

アルモドバル監督は映画を撮りつつ、
イグナシオに対する贖罪を思いつつ、
果たして自分は、美しさを失ったイグナシオを
受け入れただろうかと、自問自答しているのではないか?
そんな風に自分には思えました。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさんの感想を読むと、
この作品はとても美しく哀しい物語になって、
また違った印象が生まれてきます。

私には、あのギラギラの原色に彩られた雰囲気と、
しつこいまでの美しくない行為がショッキングで、
なかなかヤンさんのように、心情を読む感想が持てませんでした。

アルモドバル監督は、映像で強烈な印象を与える事を好む人なんですね。
本当に言いたいメッセージがぼやけるのに。

2007.11.10.Sat / 13:42 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。
>アルモドバル監督は、映像で強烈な印象を与える事を好む人なんですね。

そうですね。それも狙いなんでしょうね。
たとえば、男女の恋愛なんかで描けば、美しい映画になったかも知れませんし、
あのような描き方をしなければ、ゲイでもホモであっても、かわいそうな映画でありえたかもしれません。
そんなことも言いたいテーマなのかもしれませんね。

それじゃ、また。

2007.11.11.Sun / 23:15 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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監督:ベドロ・アルモドバル        製作:2004年 スペイン 出演:*ガエル・ガルシア・ベルナル *フェレ・マルティネス *ハビエル・カマラ 秘密の先に在るの...
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