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  メゾン・ド・ヒミコ  
2006.12.31.Sun / 22:43 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




越えてはいけなかった壁、しかし、越えてしまった壁。
越えたい壁、しかし、決して越えることができない壁。
偽物が、本物に錯覚され、、
本物が、偽者に変わってしまう、混沌とした世の中。
そんな世の中を、不当に差別されようとも、
自分の欲求に従い、捨ててきてしまった者たちを見つめ、
たくましく生き抜く彼女たち。
これは、ゲイをテーマにした映画ではないのだろう。
越えることができない壁を前にしても、
生き抜く人のたくましさが印象に残った映画。


卑弥呼は、ゲイバー「卑弥呼」の伝説的ママ、そして、
若い頃に、まだ幼かった沙織と妻を捨てた男。
ゲイとしての人生には悔いが無かったのだろうが、
娘を捨て、妻を苦しめたことには、心残りがあったのだろう。

春彦は、ゲイのための老人ホーム、ヒミコで働いている青年。
卑弥呼の為に呼び寄せた沙織と恋に落ちる。
正確には恋とは呼べないのかもしれない。
だが、沙織を愛して、しかし、結ばれることは無かった。

ゲイは嫌いなはずだった沙織。
しかし、彼女は必死に、山崎さんの為に、
ゲイを差別する男に食って掛かる、「謝れー」と。
しかし、最後まで父を許せず、
老人ホーム、ヒミコをニセモノと叫ぶ。
周りを不幸にすると分かっていても、
心の欲望に従って自分らしく生きることは、
果たしてエゴなのか? それとも誠実な生き方なのか?
けれど、そんな生き方しかできない人は確かに存在する。
自分の生き方が誰かを不幸にしている、しかし、やめられない。
正反対の気持ちを、もてあましながらも、
今日を明るく振舞おうとする彼女たち。

はたして、ヒミコは本物なのか、偽物なのか?
実は、住人のすべては気づいているのではないのだろうか?
ヒミコが、はかなくて、もろい存在であることを。
どんなに楽しくても、寂しさは隠せない。
一人欠け、二人欠け、しかし、どこにも行くことができない彼女たち。
そんなことは分かっている、しかし、それでも、
今日を明るく振舞おうとする彼女たち。

母親の想いを踏みにじった父親は、やはり許せない。
そう、沙織に言われて、それを受け入れる卑弥呼。
そして、そんな沙織を「好きだ」と言う。
同じ女性を大切に想ったからなのだろう。
自分を許さない、その気持ちを率直にぶつけてくる、しかし、
好きになる事はできるのだろう。

越えることができない壁がある。
そんなことは、十分知っている、よく分かっている。
だが、それを話さないのが、大人なのだろう。
話してしまえば、つらいから。
でも、そんなふうに付き合えれば、
はかなくても、もろくても、ヒミコで楽しく暮らすことはできる。
許せない人でも、好きになれる。
そして、結ばれない人とでも、楽しく生活できるのかもしれない。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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COMMENT TO THIS ENTRY
- from モモ太 -

私、大好きです。この映画。
でも目線はゲイの人たちよりでした。
沙織目線で観ると、また違った感じになりますね。
私は女性なので、ゲイの人たちの気持ちはわからないけど、自分の父親がゲイで母親を捨てていったら・・・と思うとやっぱり・・・。
でも母親がおしゃれして、父親の店に行っていたエピソード好きでした。
生活が苦しかったのにって言う沙織に、「かわいい人だった」とつぶやくヒミコの言葉が、沙織の母への思いを集約している気がしました。
ヒミコ役の田中泯さん、この映画で初めて知ったんですが、すごくよかったです。
先日テレビで観た「たそがれ清兵衛」でもラストちかくで出ていましたね。
やっぱり存在感があって、すぐに分かりました。

2007.01.01.Mon / 19:25 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

毎度、遅レスですいません。
憎いはずでも、受け入れがたい事情を持っていても、片目をつぶって、もう片方の目で相手を見れば、楽しく生きてゆくことができるのでしょうね。母親も佐織さんも、そしてヒミコも。かわいい人だった、って台詞、すごく意味深い台詞ですね。
 実は、田中泯さんは初めて見ましたが、こんな人が日本の映画界にいたのか!、って感じでした。すばらしい存在感でしたね。

 それじゃ、また。今年もよろしく。

2007.01.04.Thu / 19:50 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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