サイドカーに犬 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。





人は心の中に、人生を生きる為の根っこみたいなものが必要だ。
それは子供の頃の自分に、愛情と影響を与えてくれた人の存在。
そして、その人との新しい体験、楽しかった思い出。
人生に疲れて生きる力が無くなりそうになった時、
そんな根っこが自分に生きる力を与えてくれる。
心の中で、その人に語りかければ、
体に羽が生えたように心が軽くなる。
そんな人と過ごしたひと夏の経験。
実は似た者同士の女性と少女の、
ひと夏のふれあいを描いた映画。


薫はとても優等生。
大人の顔色を伺い、逆らえないでいる。
ヨーコさんも昔はそうだった。
両親の為にカメの手を血だらけになってでも食べた経験を持つ。
だからなのだろう。
新しい世界を、母親に縛られなくてよい事を、
薫には知って欲しかったのだろう。
「自転車に乗れると人生変わるよ、大げさじゃなくて本当だから。」
自転車は確かに世界を広げる。
母親の目を通さない世界は新鮮だ。

だけど、ヨーコさんには大人の事情がある。
いつもは強がって隠してはいるものの、時には、それが見えてしまう。
薫には完全に、理解できてはいないのだけれど、
なんだかとても不安になる。

飼うのと飼われるのはどちらが良い?
多分飼われるのは、まっぴらだとヨーコさんは考えているのだろう。
飼われて飼い主の顔色を伺うのは嫌なのだろう。
それは、両親との遠い昔の経験から、
そう思っているのかもしれないし、
愛人という今の立場がそう思わせているのかもしれない。

大人が大人の事情でケンカした時、
その場を取り繕うかの如く、かたずけを始める薫。
しかし、それを強い口調で二度までも止めるヨーコさん。
ヨーコさんは嫌だったのだろう。
薫が大人の顔色を伺うのが。

なにかにつけ世話を焼いた。
世話をして、面倒をみて、飼っているつもりだった。
しかし、最後には捨てられた。
捨てられることは最初から分かっていた。
しかし、悲しくて涙が止まらない。
嫌いなものを好きになるより、
好きなものを嫌いになるほうが難しい。

サイドカーに座っている犬。
飼われいるようで、
犬はそんな負い目はみじんにも感じてはいない。
むしろ道を決めているのは自分だとばかりに、
顔に風を受けて、すましている。
いつも人の右を歩く薫。
右を歩くことができなくなってしまったヨーコさん。
「でも、大丈夫。薫はそんなにはならないから。」
薫は全てを理解できたわけではないのだろう。
しかし、大丈夫という言葉は、
薫に絶対的な安心感を与えたはずだ。

新しい世界を教わり、人生を知る。
そんな機会はめったにない。
それは、両親では近すぎて、同級生では幼すぎるから。
ニセの百円玉を使い警告音に驚かされた。
宝くじに大当たりしたわけでもない。
堅実にその後の人生を歩んだことが予想される薫。
しかし、ヨーコさんは、薫にとって、人生の根っこになったのだろう。
それは、ヨーコさんにとっても同様なはずだ。
長い人生を歩き疲れても、
心にある、そんな存在が力を与えてくれる。
語りかければ、教えてくれたことが蘇ってくる。
実は似た者同士の女性と少女の一夏のふれあいを描いた映画。



サイドカーに犬@映画生活

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  • [2008/06/04 23:46]
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