アヒルと鴨のコインロッカー  
2007.10.18.Thu / 22:37 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。


この映画を未見の人は、映画を見てから下記を読んでください。
ネタバレ満載なので。
お願いします。



その時
誰かを待ちわびていた彼の心に
神の歌声が響いたのだろう


異国に暮らす孤独。
とりわけ、日本は外国人には閉鎖的だ。
そんな孤独の中で知り合った恋人と友達。
しかし、自分に親しくしてくれた恋人と友達を失った時のさらなる孤独。
一人残されてしまった孤独な魂。
だが、そんな孤独な魂にも救いはもたらされた。
復讐に走らざるをえなかった孤独な魂を描いた映画。

この物語に迷いこんだ椎名。
異国から来た人であっても、困った人は助けてあげたい。
しかし、助け方が分からないし、勇気もない。
正直者で小心者。人付き合いは不得意な青年だ。
そんな椎名が、隣人の河崎に無理矢理に本屋襲撃に荷担させられる。
河崎はいかにも、怪しそうな人物。
前半は、小心者の椎名が河崎に騙されて、
本屋襲撃以上の悪事に荷担させられている様な印象を持つ。

しかし、河崎の本当の正体が分かった時、物語の印象はガラリと変わる。
怪しげだった河崎という人物は、深い悲しみと孤独を抱えた人に変わり、
ディランを歌う椎名との何気ない出会いは、
彼自身に救いをもたらした運命の出会いへと変貌をとげる。

一方的に椎名を犯行に巻き込んだドルジ。
それは、恋人の復讐を果たす為。
そして、無き友の遺志を継ぐ為。
友が行おうとしたのと同じ方法で復讐を遂げたい。
恋人が望んだ方法で、犯人に死を与えたい。
実は彼は必死だったのだ。

日本に来たら日本語を話せ。
外国人は、何を考えているか分からない。
外国人にはとても冷たい日本人。
ドルジの正体が分かった時、椎名は、ドルジに、なぜ嘘をついたと詰め寄る。
ドルジは、自分が外国人だと分かったら相手にはしてもらえなかった、と返す。
椎名は、そんなことはない、と力なく答える。
しかし、椎名は分かっている、ドルジの考え方は正しくて、
きっと大抵の日本人はドルジを相手にしなかったであろうことを。
自分も、もしかしたら相手にしていなかったのかもしれない。
冒頭、バス停で困っていた女性を見過ごしたように。

なぜ、日本人は、そんなに冷たいのか?
アヒルと鴨には、どんな違いがあるのか、それを知りたかったドルジ。
しかし、実はアヒルと鴨といえども同じ感情を持っている。
見知らぬ土地、見知らぬ人々、初めての生活。
椎名とドルジは、程度は違えど、同じような経験を積み、
似たような孤独を持っていた。
だからこそ、椎名はドルジの孤独が理解できた。
遠いところからきたんだね、と。

アヒルと鴨。
そこには大きな違いがあって、
しかし、似たようなところもまた、存在するのだろう。



ドルジと琴美と、そして河崎。
それは居心地が良い三角関係。
琴美は河崎を嫌っているように見えるが、
多分、別れた後も、本心では忘れられないでいるのだろう。
そして、河崎も琴美を、今だに好きでいたのではないか?
だが、あまりに性格が違う二人。別れざるを得なかったのだろう。
もし、ドルジがあのように純粋でなければ、
あの三角関係は成り立たなかったであろう。

命を賭けて子犬を助けた琴美。
無事な子犬を見届けて安堵の表情を浮かべる。
自らが死に逝く直前にもかかわらず。



自首の説得にも耳を貸さないドルジ。
「殺さなかったんじゃない、殺せなかったんだ。」
ドルジは、自分の犯してしまった深い罪に、
自首という救済を拒否したのだろう。
「救える魂は救いたい」という言葉もドルジの耳には届かなかった。

神様、この物語だけは、見ないで欲しい。
あんなに暴力を嫌っていたのに、しかし、止むに止まれず復讐に走る。
それでも、最後には犬を助ける為に、再び命を賭けたドルジの本質は、
最初と、なんらかわってはいない。
それを理解していた椎名。
神をロッカーに閉じ込める。
どうか、彼の復讐に目をつぶってやって欲しいと。
物語に飛び入り参加していたはずの椎名が、
最後には、復讐で汚れてしまったドルジの魂を救うことになったのだろう。
復讐に走らざるをえなかった孤独な魂を描いた映画。

アヒルと鴨のコインロッカー@映画生活
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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作品情報 タイトル:アヒルと鴨のコインロッカー 制作:2006年・日本 監督:中村義洋 出演:濱田岳、瑛太、関めぐみ あらすじ:大学入学のため仙台に引っ越してきた椎名(濱田岳)は、奇妙な隣人の河崎(瑛太)に出会う。初対面だというのに河崎は、同じアパートに住
2010.07.24.Sat .No389 / ★★むらの映画鑑賞メモ★★ / PAGE TOP△

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