パンズ・ラビリンス  
2007.11.08.Thu / 22:11 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




この世界に絶望し、
目の前に差し出された甘美な誘いに乗って、
別な世界に旅立とうとした少女。
しかし、少女は、そんな甘美な誘いにも、最後には、
自分の考えで「NO」をつきつける。
残酷なのに美しく、幻想的で哀れ。そんな童話のような映画。

大好きだった母親が新しく選んだ父親は、とても残忍で冷酷な男。
そんな父親は好きにはなれない。
何故、母親は再婚したのか?
そんなオフェリアの疑問にも、我慢を強いる母親。
新しい父親に早く気に入られるように、と。
それでもオフェリアは母親を慕い続ける。

外では毎日争いが起こり、人が死んでゆく。
この世界は残酷で、希望のカケラさえ残されてはいない。
生きるには、余りにも厳しい現実。

貴方は別な世界の王女様。
この世界を嫌いなオフェリアには、それは、とても甘美な誘い。
別世界に旅立つ為に三つの試練に挑むオフェリア。

しかし、この三つの試練とは、
ファシストが人々を洗脳し、操る手口に似ていると感じたのは、
考えすぎであろうか、、、

絶望的な世界から逃れたい。
そして私は、抜け出すことができる選ばれた存在。
そんな想いを支えに、最初の試練を乗り越えるオフェリア。
自分は、やはり選ばれた特別な存在なのだ。
それを見事に証明したオフェリア。
そして彼女の心に芽生える優越感。

しかし、第二の試練には失敗してしまうオフェリア。
これは、レジスタンスに対する拷問のシーンに似ている。
あれほど聰明に描かれていたオフェリアが、なぜ、葡萄を口にしてしまったのか。
それこそが、実はパンに魔法で操られてしまった結果であり、
最初からこの試練は失敗するように仕組まれていたのではないのか?

捕まってしまったレジスタンスは、僅かな希望と試練をビダルに与えられる。
しかし、それは最初からパスする見込みがない試練。
やはり、最後に3をどもってしまったレジスタンス。
絶望的な状況のなか、叶うはずのない僅かな希望を与えて、あえてそれを奪う。
オフェリアの状況は、レジスタンスのそれに似ている。
もはや、相手に従わざるをえない状況に追い込まれたオフェリア。

二つ目の試練を乗り越えられなかったオフェリアに、最後のチャンスが与えられる。
何も尋ねるな、質問するな。疑問を持たず言われた事のみに従え。
これは、ファシストの常套文句。
しかし、別世界の王女になることより、自らの考えで弟を選んだオフェリア。
あれほど別世界を望んでいたのに、弟を選んだのだ。
その結果、ファシストから与えられたのは死ぬ事。
これは自らの考えに従った結果、殺されてしまった医者に似ている。
医者は死ぬことを覚悟で自らの考えに従い、かわいそうなレジスタンスに死を与えた。
オフェリアもまた、別世界に行くことが出来ないことを承知で、
自らの考えに従ったのだろう。

ならば、ファシストに「NO」をつきつければ、死が待っているのだろうか?
されど、魂の救済は確かに存在しました。
オフェリアは最後には死を迎え、
けれど、あの世で別世界の王女になることが出来ました。

この世の尊いものを守って死んでいったオフェリア。
それは、弟の命ばかりではなく、
自らの考えで善悪を判断し、それを実行に移した勇気。
その気持ちが花となり、死してなお、この世に美しい姿を残したのでしょう。
今、我々もきっと、ファシストが用意した迷宮の中にいるのでしょう。
自らの考えで善悪を判断し、それを実行することの大切さ。
現実の厳しさから目を背け、逃避するのではなく、
それそこが、迷宮を抜け出す鍵になるのでしょう。

オフェリアは死の直前に、望んでいた本当の父親に再会出来ました。
果たして、最後にオフェリアが見たものは彼女の妄想なのでしょうか、
それとも現実なのでしょうか?
しかし、この再会だけは、オフェリアの幻想とは思いたくない。
そんな、残酷なのに美しく、幻想的で哀れな、童話のような映画。

パンズ・ラビリンス@映画生活
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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COMMENT TO THIS ENTRY
- from Carolita -

ヤンさん、こんばんは。

>自らの考えで善悪を判断し、それを実行することの大切さ。
現実の厳しさから目を背け、逃避するのではなく、
それこそが、迷宮を抜け出す鍵になるのでしょう。

ヤンさん、そうですよね、私たちが住む世界も決して闇は終わっていないのですよ。大量の情報に感情さえ操作され、一歩間違えば簡単に落ちてしまいかねない、危うさ。それをこんな形で表現した監督は、やっぱり凄い才能だと改めてレビューを拝見しながら感じました。奥が深いですね、この作品は!一晩中でも語り明かしたい気分です(笑)

2007.11.10.Sat / 21:12 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

Carolitaさん、こんばんわ。

確かに奥が深い作品ですね。
幻想的で象徴的、哀しい映画なのですが、見る人が違えば、さまざまな感想や解釈が成り立ちそうです。ファンタジーを見て、ほんわかした気持ちになろうと思ったのに、見終わった後は、いろいろ考えさせられて、確かに「すごい才能」の監督ですね。


それじゃ、また。

2007.11.11.Sun / 23:24 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from タケヤン -

ヤンさんの掲示板がぁ~~~(泣)
というわけで、不慣れなブログへのコメントを書いております。
「パンズ・ラビリンス」のヤンさんの感想、やはり深いですね。
“三つの試練”がファシストの常套手段・・・なるほど。
そう言われればそんな気もします。
考えれば考えるほど深い映画ですよね。
しかしアレですね、ヤンさんはもしや美少女に弱いですか?(笑)
「ロスト・チルドレン」の主役の女の子も美少女でしたもんねぇ。

で、美少女ではありませんが「春の日の~」のペーちゃん、いいですよね。
んもう、きゃわいいっ・・・と、ついギャルのような言い方をしてしまいます(笑)
それだけにストーリーがいまひとつだったのが惜しかったですね。

それから「日本以外全部沈没」。
思いっきりブラックな笑いを期待して観に行ったら、
変に真面目に撮ってるので、あんまし笑えませんでした。
この河崎実監督って「いかレスラー」とか「かにゴールキーパー」とか、
変な映画をいっぱい撮ってるんですが、個人的にはどうもツボが合わんですな。

ってことで「パンズ・ラビリンス」のコメント欄に別の映画のことも
書いちゃいましたが、よしなにお願い致します。

2007.11.24.Sat / 00:47 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

タケヤンさん、こんばんわ。

無精者でして、ついに閑古鳥の鳴いていた掲示板、消去されてしまいました。まあ、実から出たサビですが、、、、

 実は、そうなんです。美少女に弱いにはとても弱いです。出てくるだけで、私の、その映画に対する高感度がグーーーンとあがってしまいます。今回実は、ハリー・ポッターの新作を見たのですが、イヴァナ・リンチという女の子も不思議な感じがして、良かったですよ。というのも別な映画の話ですね。すいません。

 「春の日の~」はね、ペーちゃんでなければ持ちませんでしたね。きっと。ストーリーはなくても彼女を見ているだけで幸せな映画でした。<バカすぎ?

「いかレスラー」とか「かにゴールキーパー」なんて、知りませんでした。まだまだです。さすが(?)ですね。タケヤンさん。

 わざわざ、こちらにカキコしてもらい、ありがとうございます。

それじゃ、また。

2007.11.25.Sun / 23:35 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
やっぱりヤンさんの解釈は素晴らしいですね~
特に三つの試練の解釈が。

ここを読んで、あのファンタジー世界は、
ただの少女の現実逃避ではないと思いました。
まあ、私の感じたものはもっと浅いですが(^_^;
あの世界は、少女にとってのファシストとの戦いで、
それに勝ったんですよね。

過酷な世界を、勇気を持って生きた気高い少女、
読んでいてまた泣けてきました~(;_:)

2008.10.11.Sat / 12:45 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

あなたは選ばれた存在だとか、
この忌まわしい世界を抜け出せて、
平和な世界に旅立てるとか、
これがラストのチャンスだとか、、、

人は弱くて簡単に操られてしまいがちだけど、
人は強くて正しい道を見失わない。

正しい行いをすれば、生き残れる保証はどこにもありませんが、この世に気高く美しい花を咲かせることができるんだしょうね。悲しくて美しい映画でした。

 それじゃ、また。

2008.10.11.Sat / 21:51 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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