雪に願うこと 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。


困難に負けそうになった時
人には帰れる場所がある
自分に再び力を与えてくれる場所が


人生に挫折し、
自分が人生のどん底に落ちたと、おもっていた男。
しかし、彼は、単に自分が困難から逃げていただけだと気づく。
そんな男が再び人生の困難に挑む。
人生で、困難な状況に直面した時、
帰ってこれる場所があるということは良いことだ。
そんな場所が自分に力を与えてくれる。
一度は逃げ出した男。しかし、
彼が再び困難に挑戦するまでを描いた映画。




東京での事業の失敗、離婚、倒産、そして破産。
夢敗れて、友人にも多大な迷惑をかけてしまった。
最後の賭けにも敗れ、故郷に、兄の元に逃げ帰ってきた学。
別に兄や母に頼ろうとしたわけではないのだろう。
13年間、1度も帰らなかった、しかし、困難に直面した時、
無性に会いたくなった、そして、帰りたくなった。
故郷とは、そんな場所なのだろう。

故郷に逃げてしまった学に対して、
信頼してくれた仲間を裏切ったと、詰め寄る須藤。
それに、保険で清算すると答える学。
しかし、それは須藤が欲しかった答えではないのだろう。
真剣に学に詰め寄った須藤は、単なる会社の同僚としてではなく、
友人として、学に問いただしたのだろう。
果たして、これでよいのか、逃げ出したままでよいのか、と。

「勝負は勝たなければ意味が無い。」
「勝負は勝つことだけがすべてではない。」
矛盾しているようなこれらの言葉。しかし、どちらも真実。
どんなにがんばっても、勝負に勝たなければ、
努力の意味は無い。明日は来ない。
それは、とても厳しい現実。
だが、たとえ負けても、再び挑戦することはできる。
どん底にいても、這い上がろうとすることは出来る。
逃げ出しさえしなければ、、、、

「お前も馬刺し。」
借金を苦に父は逃げ出した、と、責められている牧恵。
父の汚名を晴らすには、自分が勝つしかない。
しかし、新人のハンデが無くなったとたん、勝てなくなってしまった。
逃げ出したい。しかし、逃げずに勝ちを目指すことだけが、
父を信じ、その汚名を晴らすことにつながるのだ。
それを、一番良く知っているのは、牧恵自身なのだろう。


「馬を見ていると気持ちがやわくなってくる。学、馬はいいぜ。」
兄だって決して平坦な道を歩んできたわけではない。
時に挫折し、時に迷い、ここまで歩んできた。
つらくなった時には、きっと、馬を眺めたのだろう。
だから、弟が母のことで辛い時を迎えた時、
共に馬を眺めて、弟を癒したかったのだろう。
自分と母を捨てた弟を、それでも、兄は愛しているのだろう。


ウンリュウはレースに出たがっている。
自分も、それに乗っかりたい。
困難があれば、調子の良いことを言って逃げてきた。
しかし、もう一度挑戦したい。ウンリュウのように。

困難に負けそうになった時、
人には、帰れる場所があるのだろう。
崩れたアーチ橋、たたずむ馬たち。
そんな風景が自分たちに力をくれる。
厳しくもやさしい人々が力をくれる。
そんな、その人にとっての、生きる根っこのようなものが、
たくさん詰まった場所が故郷なのだろう。
ついには、小学校の想い出を取り戻した学。

北海道の雄大な自然。
朝霧の中、汗が湯気に変わるほどに調教に励む馬たち。
寡黙に馬を育て上げる人々。
それらは、人が何を心の拠り所として人生を歩むのか、
それを絵的に分からせてくれる。
根岸吉太郎監督は、人の生きる源のようなものを、描くのが上手だ。
今回、この映画をみて、そう思った。

ウンリュウの勝敗の行方を確認しないで、東京に向かった学。
ウンリュウが生き残るのか、馬刺しになってしまうのか。
しかし、ウンリュウはどん底から這い上がろうと挑戦する。
学には、それだけで十分なのだろう。
須藤に謝りたい。そこから学のすべてが始まるのだ。
一度は逃げ出した男、しかし、
彼が再び困難に挑戦するまでを描いた映画。

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