鉄コン筋クリート 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




侵入者に対する怒り。
相棒に去られた孤独。
圧倒的な強者に対する怖れ。
そして、死への恐怖。
心のバランスを失い、
どす黒い欲望に、その心を取り込まれようとしたクロ。
自らの心から芽生えた、その欲望は、しかし、自分の全てではない。
あくまでも自分の一部にすぎない。
その欲望が自分自身の正体であると考えることは、とても危険だ。
捨てようと思っても捨てられない、その欲望。
しかし、距離を置き、上手に扱うことは可能なのだ。
最後には心のバランスを取り戻したクロ。
自らの未来を救った少年を描いた映画。


街とは不思議な場所。
街はすべてを分け隔てなく吸収する。そして変化し続ける。
あらゆる人々の要求を吸い込み、
その欲望を街の一部として取り込み、
そして、そこに住む人々を育てる。

だからといって、俺の町といって、
町を所有していると思い込むのは、とても危険だ。
長い歴史を持つであろう、宝町。
そして、宝町は多くの欲望を吸い込んだ、底が見えない町。
たくさんの変化を積み重ね、これからも変化し続ける雑多な町。
そんな巨大な存在は個人の手には余る。
逆に取り込まれ、自分が見えなくなってしまうかもしれない。
町の変化についてゆけず、大きな失望を味わうかもしれない。
それは、とても危険なこと。
町は誰にも所有できない生き物。
それを意識して付き合うことが大切なのだろう。

クロは、シロを守っていると思っていた。
しかし、守られていたのはクロ。
欲望に染まりそうな心にバランスをもたらしていたのは、
全てを知り、クロの持っていないネジをもっていたシロなのだろう。

町に、それまでとは違った異質な欲望が持ち込まれてしまった。
変貌してゆく町。
しかし、異質であったと思った風景は、いつの間にか、
見慣れた風景となり、この町に溶け込んでゆくのだろう。
しかし、宝町を自分の町と思い、その変化に抗うクロ。

相棒に去られ、心のバランスを失っていたクロに迫る圧倒的な刺客。
しかし、クロを救ったのは、イタチ。
だが、イタチはクロの中で育った欲望が具現化したものなのだろう。
イタチがまさにクロを乗っ取ろうとした時、
それを助けたのは、またもやシロ。

欲望に感情をまかせ、心のすべてを染めてしまうのは、とても危険だ。
力を欲して、見境なく突っ走ることも、とても危険だ。
自らの心の中に存在し続けるどす黒い欲望。
自分の心の一部なのに、その深遠は、自分ですら、うかがいしれない。
それを自分のすべてだと錯覚してしまえば、
そんな巨大な存在に取り込まれ、
自分が見えなくなってしまうかもしれない。
そんな巨大な存在に身を任せれば、
自分の変化に自分自身が戸惑ってしまうのかもしれない。

シロは自分との付き合い方を知っている。
自分の感情の変化には敏感で、客観的だ。
そんなシロを信じたクロ。


細部まで細かく描きこまれている風景がとても鮮やか。
クロやシロの動きも丹念に描きこまれている。とても見事な映像。

最後にクロとシロに訪れる平穏。
イタチは、まだクロの心の中にいるのだろう。
しかし、それはクロの心のほんの一部。
上手に付き合うことは可能だ。シロのように。町に対するように。
自らの未来を救った少年を描いた映画。

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