秒速5センチメートル 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




予想外の出来事に、ただ、うろたえ、
ただ、時を耐えて待つしかできなかった少年時代。
大切な人を守る事もできず、
ただ、戸惑うしか術を知らなかった、あの頃。
強くなりたい。
小さな地球を飛び出し、無限のかなたを目指す為、
心細さに一人耐えている、あの宇宙ロケットのように。
しかし、いつしか、守りたいと思っていた人は自分の元から去り、
強く成りたいと思う気持は空回りして、失なわれてゆく。
何故強く成りたいと欲したのか。
少年が思い描いている世界と現実との大きな隔たり。
世界は自分が思う以上に大きくて、
彼女は自分の支え無しでも生きている。
むしろ、思い込みを捨てて、
世界をありのままに受け入れ、
一人の女性を対等な人間として付き合う時期に、
青年はさしかかってきたのだろう。
届かない想いに挫折した切なさを描いた映画。
そして細部まで描きこまれた画面が美しい映画。




大切な人を守る事ができなかった。
貴樹に取って、それはトラウマにも似た想い。
いつまでも一緒に居られると思っていた。
しかし、明里の転校が決まった時、
悲しみにくれ、ただ明里を突っぱねるしかできなかった。

会おうと手紙を出した、約束の日。
しかし、豪雪の為に遅れる電車。
多分、それでも明里は待っていてくれるだろう。
寒さと心細さに一人耐えながら。
そんな明里に何もしてあげる事ができない無力な自分。
こんなアクシデントは思いもしなかった。
なんて自分は無力なんだろう。
どうか、帰ってくれていて欲しい。
しかし、そして、やはり、明里は其処にいた。
ただ貴樹のコートの袖を掴み泣き続ける明里。

桜の木の下での初めてのキス。
無防備にも自分に体を預けてくる明里。
それは素晴らしい体験ではあるものの、
明里をどのように支え、守ってやればよいのか、
無力な自分に途方にくれる貴樹。

別れ際。強くなりたいと願う貴樹。
それは明里を守る為に。
しかし、貴樹君なら大丈夫、そう言って、
明里も貴樹を支えようとしていた事には気付かなかった貴樹。


遠距離恋愛の心細さ。
しかし、あの日の誓いを果たす為、一人遠くを目指す貴樹。
明里の心が離れつつあることも、
側に自分に想いを寄せる少女が居ることも、
気付いていない。
多分気付かないふりをしていたのだろう。
それは強くなるために。


都会に出て就職し、しかし、昔の想いを失ってしまった貴樹。
強く想い続けていた。しかし、強く思えば思うほどに、
自分が思い描いていた世界と現実は離れてゆく。
貴樹は明里を想い続けたわけではないのだろう。
あの時をやり直したい。
そんな後悔が貴樹を支えていたのだろう。
しかしやり直すことは出来はしない。
そして永久にその機会は失ってしまった事を、
認識せざるを得ない現実。
何処を目指して飛べばいいのだろうか。

しかし、実は、迷っていても構わない。
先ずは自分に出来る事から少しづつ。
それは花苗の言葉なのだけれど、
今の貴樹にぴったりの言葉なのだろう。
なにかをふっ切ったような貴樹の最後の笑顔が印象的。

届かない想いに挫折し、しかし、
迷ったその場所から、新しい出発を始める。
そんな切なさを描いた映画。

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