ゾディアック
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ゾディアックと名乗る男が、
公認されているだけでも5人の人間を惨殺し、
新聞社に脅迫状を送り続けた、60年代に発生した連続殺人事件。
しかし、その怪奇性や猟奇性を描こうというよりは、
この事件を記録として残そうとした姿勢が強く感じられる映画。
この事件に関わった人々は三種類に分けられるように感じられる。
ゾディアック自身、もしくはその名前を語り、
世間を騒がせ、支配した気になり、快楽に浸った人々。
自らの名前が公となり、ゾディアックの攻撃の対象となり、
被害を被った人々。
そして、家族を犠牲にしてまで純粋に謎解きを楽しんだ男。
三者三様のかかわり方を通して、
ゾディアック事件を忠実に記録として残そうとした映画。
そして、私には、人が謎との距離をいかにして取るのかが印象的な映画。
公認されているだけでも5人の人間が惨殺された連続殺人事件。
しかし、殺人自体には猟奇性や怪奇性はあまり感じられなかった。
むしろ、マスコミを通じて、その殺人を公表する手口に、異常性を感じる。
世間を騒がせ、自分の言動に右往左往する人々を見て、
社会全体を支配した気になる犯人。
きっと、ゾディアックは自己顕示欲が強く、支配欲が強い男なのだろう。
そして、その素顔は明かされないままに、映画は幕を閉じる。
ゾディアックを追求するうちに、
有名人となってしまったトースキー刑事とエイブリー記者。
ゾディアックの攻撃の対象となり、人生を狂わされる。
標的となった恐怖で、酒に溺れ、左遷されてしまうエイブリー。
トースキー刑事は、彼が属する警察から、あらぬ疑いを掛けられてしまう。
仕事として、義務として、
この事件を追及したトースキー刑事とアームストロング刑事。
しかし、彼らは捜査の途中で彼ら自身の限界を迎えてしまう。
転属願を提出するアームストロング刑事。
トースキー刑事は、この事件を過去の事件と割り切る。
彼らは、この謎解きに、どこかで折り合いをつけたのだろう。
自分はやるだけのことはやったと。
家宅捜査までして、犯人だと思った男。
しかし、物的証拠は挙がらなかった。
核心をもって彼を犯人と断定したのか?
単に、この迷宮に対して結論が欲しかったから飛びついてしまったのか?
それは、誰にもわからない。
最後に、一人、ゾディアックを追及するグレイスミス。
グレイスミスにとっては、義務でもなければ仕事でもない。
だからこそ、逆に最後まで続けることができたのだろう。
自分の仮説を立証したい。陰に隠れた真実を見てみたい。
今ほど科学捜査も情報共有の技術も進んでいない60年代。
捜査には不備だらけ。点と点を繋げれば何かが見えてくるはずなのだ。
だからこそ、彼の志向がその謎解きに向けられたのだろう。
家族と捜査とは、どちらが大切なのか?
それは、当然、家族だと答えるグレイスミス。
家族が危険にさらされるのは、無論避けたい。
しかし、彼が家族を失う代わりに真実を手に入れることができたとしたのなら、、、
彼は真実の方を選択するのかもしれない。
人には、さまざまな性がある。
一銭にもならない、義務でも仕事でもないのに、真実を追い続ける。
全てを失ってでも、その先に、何があったのかを知りたいと強く欲する。
それも、人の救われない性なのかもしれない。
しかし、その一方で、
謎を抱えたまま不安定な日々を過ごすことができない人もいる。
そんな日々と決別するために、離れる人、諦める人。忘れる人。
目の前にぶら下げられた答えに飛びつき、
それが真実であることを強く欲するあまり、真実が見えなくなる人。
それらも、人の性なのかもしれない。
この映画は犯人を断定はしていない。
しかし、ある人物を限りなく近く犯人と断定して、幕を閉じている。
全てを投げ打って謎を追及したグレイスミス。
諦めたはずなのに、心の中の欲求がくすぶり続けるトースキー。
人生が崩壊する前に、謎を諦めたアームストロング。
人生が崩壊してから、謎を諦めたエイブリー。
果たしてリーは本当に犯人なのか?
それとも、真実を知りたいと焦る人々が作り出した妄想か?
私には、謎と人との距離の取り方が印象的な映画。
- [2008/04/10 22:22]
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コメント
謎は解きたくなる
ヤンさん、こんにちは!
最後に挙げた4人のうち、アームストロングが、
一番冷静で正しい判断をしたように思います。
でも、人生をかけてまで取り組みたくなるような魔力が、
このゾディアック事件にはあったと言う事でしょうね。
未解決なのが、なんとも悔しい事件です。
冷静ではいられない
YANさん、こんばんわ。
あまりに謎にのめり込むグレイスミスに対して、グレイスミスの奥さんが、「なぜ、あなたが謎を追いかけなければならないの?」というセリフに、当惑したようなグレイスミスの表情が忘れられません。この謎を追うのは当たり前だとばかりに、、、、もうすぐ解けそう、あと一息、そんな焦りが、なんだか、苦しくなるような映画でした。そういう意味で、よくぞ、アームストロングは思いとどまったな、とも思えるし、もう一息という不安定さと緊張感に疲れてしまったのかと思えます。
それじゃ、また。
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