夜のピクニック 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




親友にも打ち明けることができない秘密を抱えた少女。
歩行祭の夜という特別な夜に、賭けをする。
しかし、無情にも時間は過ぎ去り、
なにもできないままに、すでにゴールは、もう間近。
しかし、少女を助けたのは彼女を取り巻く友人たち。
そして、幸せな出発点にゴールできた二人。
特別な夜と友人、このどちらかが欠けても、
きっと、このゴールにはたどり着けなかったのだろう。
特別な夜に、奇跡をもたらした友情を描いた映画。



ただ歩くだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう。
24時間かけて80キロを、ただひたすら歩き続ける歩行祭。
単に並んで歩くだけの夜なのに、それは、特別な時間。
さまざまな人のさまざまな想いが交差する夜。

時間が過ぎてゆくのが、実感として分かる。
だからこそ、今を大切に生きたい、と感じることができる。
なぜなら、今という時は二度と戻ってはこない。
今見ている風景も、時が少しでも経てば変化し、
そして自分が成長すれば、その風景を受け止める心も、変わってゆく。
同じ風景を同じ気持ちで見ることは、不可能だということを、
この夜は実感を伴って教えてくれる。
そして、失われてゆくのは、何かを行うとするキッカケも同様だ。

同じクラスに、異母兄弟をもつ貴子。
しかし、それは親友にすら打ち明けられない彼女の秘密。
そして、相手である西脇にも、わだかまりを持ち、無視してしまう。
本当は、話をしてみたかった。
しかし、二人の知らない所で築かれた人間関係が、
二人の関係までをも複雑にしてしまう。


歩行祭の夜に賭けをする貴子。
しかし無情にも過ぎてゆく時間。
そして似た者同士の意地の張り合い。
けれど、そんな貴子の賭けを後押ししたのは、
実は事情を知っていた友達。
貴子の心を和らげる美和。
密かに、おまじないを掛けていた安奈。

「甲田親子に嫉妬していたんだと思う。かっこよくて。凛としてて」
そんな本音を交わす兄妹。それはとても幸せな光景。
「損した。もっと青春しとくんだった。」
それは、もっと早めに話をすれば良かったという後悔や、
もっと素直になれば良かったという反省も含まれているのだろう。
しかし、
「今、してるじゃん。これってすごく青春ぽくない?」
「腹違いの兄弟。チョーメロドラマ。」
「青春じゃん。」
遠回りこそが、青春なのだろう。

「もう一生こんなとこに座って、
 こんなアングルで、こんな景色ながめることないんだな。」
「俺が一番悔しいのは、このことを杏奈の弟の口から聞いたことだ。」
そんなクサいセリフを交わすことができるのも青春。
道に落書きをする男の子たち。
動物のマスクを被る兄弟。
お守りを交換するカップル。
もうすぐ終わりだね、と大変な裏方を黙々とこなす実行委員。
皆が自分のやり方で、青春を過ごす。
自分自身の歩行祭を楽しんでいる。
そんな、幸せで懐かしくもある光景が詰まっている。
ただ、悪ノリしすぎなギャグがちょっと残念。

ゴール間近の最後の坂道で、
「さあ、最後の青春するか。」
「よし、青春するぞ」と声を揃える兄妹。
「何、息合わせてんだよ。ムカつくこの兄妹」と茶化す忍。
さっきまでは反目していたのに、
この息の合わせ方は、やはり似たもの兄弟なのだろう。
そして、そんな兄妹が、
やっと話ができたという安堵感が言わせたセリフなのだろう。

皆のゴールを見つめる校長先生のすべてを包み込むような暖かな笑顔。
そして、美和リンに「ありがとうネ。」
それは、長い悩みが解決した、とても幸せな光景。
特別な夜と友人、このどちらかが欠けても、
きっと、この幸せな出発点にはたどり着けなかったのだろう。
特別な夜に、奇跡をもたらした友情を描いた映画。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://yan2005.blog10.fc2.com/tb.php/584-cf878843