気球クラブ、その後  
2008.05.15.Thu / 22:34 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




青春を終わらすことができなかった男と、
そんな男を待ち続けることに疲れ果てた女。
曖昧だが確かに存在した青春、その感傷を描いた映画。


果たして、青春の終わりとは、何なのか。
終わらせるにはどうすればいいのか。
学校を卒業する。
社会に出て働く。
昔の友達に会わなくなる。
徹夜でドンチャン騒ぎをしなくなる。
好きな人と結婚し、家庭を持ち、家族を養う。
人生に妥協する。夢を諦める。
青春の存在自身が曖昧なように、
その終わりも、終わらせ方もまた曖昧だ。
自分の青春を振り返り、
青春が終わった瞬間を憶えている人がいるかもしれない。
しかし、その瞬間に全てが変わったわけではないのだろう。
曖昧なままに始まり、なんとなく終わりを告げる。
そんなものではないのだろうか。
気球クラブに集まった人々。
気球が好きな人。
出会いを求めた人。
単にドンチャン騒ぎが好きな人。
この雰囲気は少し前の時代のものかもしれない。
しかし、それが彼等の青春時代なのだろう。

気球クラブの主宰者が事故で死んでしまった。
その死をきっかけに集まった元クラブのメンバー。
その当時は何が起こっていたのか、わからなかった。
しかし、今、回想するとおぼろげながらも見えてくる気がする。
夢を諦めることができなかった村上。
そんな 村上を待ち続けることに疲れた美津子さん。
しかし、美津子さんは自分が待ち続けたものの正体を、
村上の元を去った後でも、知りたかったのだろう。
それは、自分の想いと青春に決着をつける為に。
映画の冒頭、美津子さんに死を告げる事を嫌がった、みどり。
それは美津子さんの深い想いを知っていたからなのだろう。
そして、気球に付けられた手紙が、村上の死で実質的には、
その意味が永遠に失われてしまった事を、
美津子さんには告げたくはなかったから。
世の中には忘れた方が良い事もある。しかし、真実を告げる、みどり。
それは美津子さんを解放してあげたかったからなのだろう。
そして、それは正しかった。みどりからの電話にだけは出た美津子さん。
美津子さんは最後の日の約束を忘れてはいなかったのだ。

村上は多分、気球に付けられた手紙を、
美津子さんには読んで欲しくはなかったのだろう。
最初は読んで欲しくて書いた手紙。
しかし、それを美津子さんが読む事は、
自らの夢と青春を終わらせることに繋がると悟ったのだろう。
気球でのプロポーズは唯一夢を諦めず、
美津子さんの想いに応える方法であった。
しかし、そんな卑怯な曖昧さを拒否した美津子さん。
そして、夢を、青春を続ける事を選んだ村上。
夢のない人生なんてクソだ。
そんな人生にしがみついているのは、もっとクソだ。
生きている限り夢を持ち高く飛べ。それが生きている証拠だ。
そんな信念を貫いたのだ。
ある意味で村上は大人になる責任から逃げていたのかもしれない。


気球クラブのメンバーのアドレス、電話番号を各自が削除し、
曖昧な青春から卒業する彼ら。
一つの青春が終わったのかもしれない。
しかし、彼らの中の他の青春は続いているのだろう。
けれど、こうやって、少しづつ青春は終わっていくのだろう。
そして思い出になり、たまにしか振り返られなくなる。
曖昧だが確かに存在した青春、その感傷を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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