悪人の世界と善人の世界。
それは通常であれば決して交わる事がない世界。
しかし、悪人の世界に迷い込んでしまった女。
そして、悪人と善人の世界の境に立つ男。
果たして彼は自らの未来をどちらに選ぶのか。
どちらか片方だけを選ぶことなど、
両方を知る彼にできるのだろうか?
善と悪の境目の混沌とした心を描いた映画。
助産婦であるアンナ。
流産という悲しい過去を持つ女。
だから目の前にいる小さな命を捨てることができないでいる。
「俺はただの運転手。」
自分自身の意思も持たず、
悪人の言うなりに従い悪事をかさねるニコライ。
しかし彼は心から悪には徹しきれてない男のように感じる。
悪人の世界に足を踏み入れ、
その世界のあまりの鬼畜さに嫌悪するアンナ。
けれど、ニコライからだけは不思議と、
そんな嫌悪感を感じないでいる。
イースタンプロミス。
それは人間以下の生活をする者への、
幸せへの約束だったはずだ。
しかし、その約束は同胞であるはずのロシア人に、
無惨にも踏みにじられ、食い物にされ、捨てられてゆく。
ボスはやり過ぎた。
人を利用し非道を重ね容赦なく人を切り捨てる。
まともな神経なら耐えられない行為。
しかし、そんな行為の元に彼らの社会は成り立っているのだろう。
ボスであるセミオンから赤ちゃんを殺すことを命じられるキリル。
しかし、悪の世界で生きてきたキリルなのに、
赤ちゃんを殺すことにためらいを見せる。
それは善人の世界では当たり前のこと。
しかし悪人の世界では甘い考え。
これは、ボスの息子として育てられたキリルの甘さなのか?
それとも、悪の世界に住む人間といえども、
善人の世界の感情を持ち合わせているということなのか?
潜入捜査官のはずだったニコライ。
しかし、ニコライは悪の世界の権力を受け継ぐ。
アンナの叔父も、かわいそうな売春婦も、確かにニコライに助けられた。
しかし、彼が受け継いだ権力は、
イースタン・プロミスの上に成り立っている。
多くの少女を食い物にして成り立っている世界なのだ。
お互いに惹かれあったアンナとニコライ。
それはニコライの心が善人の世界に住んでいることを意味しているのだろう。
しかし、彼らは別れを告げ、二度と再び出会うことは無いのだろう。
それはニコライの心が悪人の世界に住んでいることを意味しているのだろう。
果たして彼は自らの未来をどちらに選ぶのか?
善と悪の境目の混沌とした心を描いた映画。