ミスト  
2009.01.08.Thu / 21:10 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




あのような、
自分という尺度を遥かに越えた生物を目の前にした時、
この世の終わりが来て、神が自らを裁く時と感じた時、
自分という人間は果たして生き残って良い存在なのかと問いかけてみたくなる。
自分という人間は、この世の終わりに、
ノアの箱舟に乗ることが出来るに値する清く尊い生き物なのかと、、、
しかし、答えも実は知っている。
答えはきっと、いいえ。
誰もが自らに問いかけたとしても、答えはきっと、いいえ。
だから、死を選ぶしかない。
それは、自分という人間の範囲で信じることが出来る唯一の答え。

人はちっぽけな生き物。
神の意志を理解したつもりでいた。
しかし、神は遥か、自分たちの理解の外に居る。
けれど、人は何かを信じて救われる生き物なのだ。
そんな、人の弱さを描いた映画。
もし仮に、この映画がヒーロー物であったのなら、、
八歳の娘の為に飛び出していった母親を、
ヒーローは見捨てなかっただろう。
霧の中に連れ去られた若いスーパーの店員も、
外に連れ去られることは無かったのかもしれない。
しかし、主人公たちは生身の人間。
他にどんな選択肢があったのだろうか?
自らの安全の為に、自分の能力を超えた存在に対して、
他人を見捨てるという選択肢以外に。

スーパーに取り残された人々は、
自分の理解を遥かに超えた状況を、
しかし、自分という人間の器の範囲で理解しようとする。
これは単なる事故なのか?
それとも神の最後の審判なのか?
異常な状況と体験の中、人々が神の審判を信じてしまうのは、
人としての弱さの表れであろう。

このままスーパーに留まっていれば悲劇が待ち構えている。
それは、外に居る生物によって、もたらされるのではなく、
内なる人の残酷さによって。
スーパーに取り残された人々を再び見捨てる主人公たち。

この世のものとは思えない光景を目の辺りにし、
ついにはガソリンも底をつき、最後を迎える彼ら。
確かに彼らの決断は早急過ぎた感が否めない。
しかし、もしあのような場面に自らが遭遇した場合、
もう少し待ってみる、という回答は、
この映画に正面から向き合っていない気がする。
心の底から絶望に囚われ、最後の日を信じてしまった。
そして自分たちが今ここに居ることができるのは、
多くの人々を見捨ててきた結果。
だから最後の審判に助かるわけも無い。
さらに、自分はそんなには清く尊い生き方をしてはこなかった人間なのだから。
だからこその決断なのだろう。
しかし、現実は、これは単なる事故。
もしかしたら、神が人を裁くという考え自身、
人の思い上がりなのかもしれない。
けれど、神の審判を信じてしまうのは、
誰もが持つであろう人の弱さなのかもしれない。

映画の冒頭、どことなく感じるぎこちなさが、
これから何か異様なことが起こる事を暗示している。
その雰囲気の造詣が見事。

人は弱い生き物。
何かを信じなければ生きてはいけない。
それが事実ではなくとも、
自らが信じることが出来る思想を、信じてしまうのだろう。
そんな、人の弱さを描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.652 / タイトル ま行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、これ とうとうご覧になりましたか。
濃い宗教色を受けた解釈になっていますね。
今回は、ヤンさんの解釈にいろいろ疑問を持ちました。

主人公達は、他の人たちと考えが違うのでスーパーを出たと思うんです。
だから、スーパーの人たちを見捨てたという意識はないような・・・?

>自分が生き残って良い存在なのか?答えはきっといいえ。
主人公達は、狂信女の言う最後の審判を信じていなかった
グループに見えました。
生き残りたくて、外に出るという選択をしたのだけど、
策が尽き果てたので、死を選ぶしかないと決断した・・・
私はそう思いました。

だけど、人の弱さを描いているというのは同感です。
弱いから狂信女の言う強い言葉を信じてしまった人々。
弱いからもうこれ以上生きる道がないと思ってしまった主人公達。

同じような事を感じながらも、
いろいろ解釈のできる作品だと、改めて思いました。

2009.01.10.Sat / 17:17 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんにちは。

 まあ、映画には人それぞれの解釈が干渉があり、それを知るのも映画を見る楽しみだと思います。下記は私の勝手な解釈ですが、、、

 主人公達は、このままスーパーに居れば、例の女性の洗脳の為に皆が殺しあうことを知っていました。本来ならばスーパーに留まったほうが危険は無かったのに、無理に脱出(しかも黙って)したのは、この殺し合いに巻き込まれないためです。ここで主人公達の選択肢は、実は二つあります。一つ目は黙って逃げ出す。二つ目はあくまで、例の女性と戦い、人々を彼女の洗脳から救う、という選択肢です。主人公達は後者は不可能だと考えました。それが見捨てる、という行為だと私には思えました。くりかえしますが、並みのヒーロー映画では明らかに後者の選択をヒーローはすると思います。

 先ほど、YANさんのプログにも書き込みましたが、主人公達が策がない、と判断したのは、絶望のあまり他に策が思いつかなかった(というか考えようとする気力が無くなった、心が折れた状態)、というように私は感じました。その絶望は今までの異常な経験と見てきた信じられない光景とで、この世の終わりが来た、と信じてしまったからだと思います。

 まあ、私の解釈です。他にもいろいろあるかもしれません。YANさんの人の傲慢さ、というのもなるほど、と思えました。

それじゃ、また。

2009.01.11.Sun / 14:53 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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