ドレスデン、運命の日  
2009.03.03.Tue / 21:52 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






昨日までは何も知らなかった。
自分は自由に生き、自由に人生を選択していると信じていた。
しかし、最悪なのは不自由なことではない。
自分が自由だと錯覚していること。
ステレオタイプの人物配置とストーリーが邪魔をして、
評価が低くなりそうな、この映画。
しかし、自分が自由であるという錯覚から目覚め、
自由に人生を選択した女性を描いた映画。
そして、圧倒的な空爆シーンが見事な映画。


ドレスデンの病院で働く看護婦、アンナ。
助けなければならない人を助けたい。
アンナは自らの職務に強い信念と意志を持った女性だ。

同じ病院に働く医師、そしてアンナのフィアンセでもあるアレクサンダー。
彼もまた、自らの職務に強い信念と意志を持っている。
しかし、アンナの父親の横流しを知った時、
自分が、なぜ兵役を免れていたのかを知った時、
心では納得できなくても、状況に流され、
父親に従わざるを得ないアレクサンダー。
自らの正義感を貫くのは難しい。
戦時下であれば、それは、なおさらなのだろう。
自らを情けなく感じたことが、アレクサンダーに、
銃の暴発で死にそうな少年を見捨てさせたのだろう。
しかし、その少年の兄を助けた、ロバート。
事情を知らないアンナには対照的に見えたであろう二人。

うすうすは感じていたのかもしれない。
自分が自由に人生を選択してはいないことを。
ロバートに教えられ、父親の不正を知るアンナ。
遂には家出を決意する。自由に生きるために。

自らの意志を貫くのも難しい。
戦時下であれば、それは、なおさらなのだろう。
そして、ドレスデンの大空襲、それは、
アンナの意志が試される日なのだろう。

最初は父親に従わざるを得ないと考えていたアンナ。
しかし、空襲が始まった時、目指したのはロバートの場所。
そして、アンナは最後までロバートの元を離れなかった。
確かに、この映画では、アンナのロバートに対する気持ちは、
唐突過ぎて、ついて行けない感は否めない。
しかし、アンナにとってのロバートとは、
新しい自由な生き方の象徴なのであろう。
父親が死ぬ直前に、過ちを悟り、遺した言葉、「自由に生きろ。」がとても痛い。


アンナの同僚マリアは、ユダヤ人を夫に持つ女性。
回りの離婚の勧めにも応ぜず、
空爆の日は、ユダヤ人であるために防空壕に入ることができない夫の傍を、
片時も離れない。
12年間も耐えて来たが、しかし、遂に夫が連れ去られる時が来た。
夫であるジーマンは、しかし、マリアにはそれを内緒にしている。
多分、もう覚悟を決めたのだろう。
もしかしたら、男は弱いのかもしれない。
それは、間違っていると分っても体制には従順となるからだ。
しかし、女性は強い。たくましい。

ドレスデンの大空襲は、マリア夫妻に開放をもたらしたと信じたかった。
しかし、空襲で焼けた町をパトロールするゲシュタポ。
彼らは非情にも、鍋を拾っただけの男に死刑を実施する。
だから、マリア夫妻の開放の日も、まだ遠く、
夫が、それまで無事に生き残れるのか、誰にも分らない。


大空襲を境に、死んでしまった街。しかし、現代に甦った街。
大空襲の前の街並みをもっと写しておけば、
この感慨も大きかったかもしれない。これがとても残念。

ともすれば、ステレオタイプに配された人物たちや、
一見すると唐突すぎるメロドラマが、
この映画の評価を下げるのかもしれないが、
それでも、製作者サイドが意図した空爆の残酷さは、
よく伝わってくる。
イギリス軍の空爆の意図が、単に政治的なものであることも、
この残酷さに拍車を掛けている。

最後には自分の人生を選択したアンナ。
自分が自由であるという錯覚から目覚め、
自由に人生を選択した女性を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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