ICHI  
2009.03.05.Thu / 22:00 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






白河の関に集まる様々な人々。
愛と憎しみの境で身のおき場所が分からない少女。
母親の愛情に如何に応えるべきか、答えを求めてさすらう男。
背負わされた責任の重さに喘ぐ息子。
憎しみに囚われ世を捨てた侍。
この映画では、道を見失った少女が、
自分の歩むべき道を見つけるまでを描いた映画だが、
私にとって印象的なのは、彼らそれぞれの生き方。


盲目の少女、市は、しかし、
子供の頃は安住の地と愛情に囲まれて育っていた。
しかし、突如として、それらは失われる。
突然の喪失を周りの世界が自分を裏切ったように感じたのだろう。
それ以降、市は、いつ裏切るか分からない世界との距離の取り方を、
分からないでいる。
刀を抜けない十馬。
母親を盲目にしてしまったのは自分。
しかし、自分を最後まで愛してくれた母親。
だから、十馬は、やさしい気持ちを失わないで、
大人になったのだろう。
しかし、刀を抜けない為に、
家から、父親から、十馬は捨てられてしまった。

偉大な父親を持つ虎次。
父親を愛し、しかし、その偉大さに苦しんでいる。
父親から背負わされた大きな荷物の為に、
自分がしたい生き方を捨て、父親の為に生きる。
しかし、それはとても大きな荷物。
けれど、虎次は父親を愛している。

剣の腕は達人。
しかし、醜い顔の為に、忌み嫌われる万鬼。
幕府からも捨てられ、捨てた世界を憎む。
けれど、捨てられた者の末路を知っている。
いつかはボロのように朽ちて、死んでゆくだけ。
だから、世を捨て、面白おかしく生きてやる。

そんな四人が白河の関で運命を交える。
十馬は、市に生きることを教える。
きっと、生きる事に迷う市に、
母親を盲目にして苦しんだ、かつての自分を重ねたのだろう。
市を助けることは、盲目の母親の愛に応えること。
自分の危機にも、他人の危険にも、刀を抜けなかった。
しかし、母親の為になら抜けたのだろう。
それは、母親が自分に示してくれた愛情のおかげなのだろう。

万鬼は、市に世を捨てさせることを強要する。
市は自分と同じ匂いがする。
それは、世界に裏切られ捨てらた者が持つ匂い。
あいつも自分の世界に取りこみたい。
死の匂いが漂う、暗くて冷たい世界に。
だから、自分の生き方を強要する。

市は自分に剣を教えてくれた男を求めてさ迷う。
剣を教えてくれたのは父親かもしれない。
そして、自分に世界との距離のとり方を、
教えてくれるかもしれない。
それは、十馬にとっての母親のような存在なのだろう。
しかし、世界との距離のとり方を教えてくれたのは十馬。
世界は時として残酷にも裏切るが、
逆に暖かく導いてくれる人もいるのだ。

捨てられて、この世との繋がりを捨てた侍。
捨てられたが、この世との繋がりを捨てなかった男。
捨てたい、しかし、捨てたくはない、そして捨てなかった息子。
そして、捨てられはしたが、最後には見つけた少女。
彼らそれぞれの生き方が印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.670 / タイトル あ行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.