ラースに彼女が出来て変わった事。
それは、ラースが人々と交流を持ち始めた事。
今までであれば、避けてきた。
しかし、ビアンカを通じて、
人々と触れ合う事が出来るようになったのだろう。
それは、もしかしたら、彼女を早く作れと、
うるさく言われなくなったからなのかもしれない。
友人の誕生会に招待され、ドアのベルを押すラース。
彼が新しい一歩を踏み出した瞬間。
そして、それがとても楽しいことだと分った経験。
その全てが、何とも微笑ましい。

ビアンカが街の人々に本当の人間として受け入れられるにつれ、
ラースの気持も変わってくる。
ビアンカにはビアンカの人生がある事。
だから、ラースの思い通りにはならないこと。
そして本当は、マーゴが気になるラース。
マーゴに彼氏が出来た時、
いつも傍にいると思ったビアンカも出かけてしまい、一人ぼっち。
そんな寂しさを紛らわせるために義姉に向かって吐いた暴言。
しかし、
「皆があなたのことを大好きだから、
　貴方の為にいやな顔一つせず力になってくれてるのよ！」
それは、寂しいということを知ったラースが、
皆の善意を理解した瞬間なのだろう。

ラースが大人になることを見守った街の人々。
多分、無理矢理、ビアンカを取り上げたのならば、
うまくは行かなかっただろう。
自身の行いを振りかえり、素直に謝る兄。
街の人々も、皆が試されたのだろう。

ビアンカが現れたのには理由がある。
もしかしたら、母親がやり残したことを、
引き継いだのかもしれない。
もしかしたら、ラースの本能が求めたのかもしれない。

少年が大人になる。
別れの痛みに耐えながらも、自身の意志により。
ついにビアンカとの別れを決意するラース。
重い病に侵されたビアンカに届けられる花束。
彼女へのお見舞いというよりは、
大人になる為の痛みに耐えているラースへの応援のように見えた。
そして、ビアンカに涙ながらに別れを告げるラース。
それはビアンカとの別れだけではないのだろう。
母親との思い出や少年の頃の楽しかった日々。
それらは、すべて過去のものになり、
これからは、愛すべき人々の為ならば、
自らを犠牲にすることを知る大人になるのだろう。

最後にラースが見せた晴れやかな笑顔。
何とも、すがすがしい映画。