マンダレイ  
2009.05.04.Mon / 18:44 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






理想と現実との差。
理想は、単純で明快だ。
しかし、現実は複雑で不愉快だ。
個人が持つ価値観、幸福についての考え。
それらの差異が現実を複雑にしている。
自らの理想を他国に押し付ける、
アメリカを批判した映画なのかもしれない。
しかし、人を導くということの、
傲慢さ、孤独、困難さが心に残る映画。


マンダレイを救いたい。
理想に燃えるヒロイン、グレース。
その心根は純粋で真っ直ぐ。
しかし、その道は険しい。

個人が心に描く自分の幸せ、望んでいる生活。
それらは決して同じではない。
自由に怯え、不自由に安定と安心を見出す人々。
グレースが思い描いた幸せ、そして与えた自由は、
彼らが望んでいた幸せではなかったのだ。
長い間に培われてきた安心して生きる為の知恵。
木を切ってはならないこと。
奴隷の分類、そして扱い方。彼らの役割。
奇妙に、そして巧妙に築かれた人間関係と彼らの力関係。
それらを悪と決めて廃止することは簡単だ。
しかし、人は簡単には変わらない。
自然環境も簡単には変わらない。
廃止の後に訪れる、予期せぬ混沌と混乱。

民主政治と多数決。
しかし、これらは間違えれば衆愚政治へと落ちてゆく。
空腹の為に、病人である娘の食事に手をつけてしまった老婆。
果たして彼女の行いは死に値するのか?
しかし、多数決で死刑を決めてしまった彼ら。

自由を与えられても、しかし、別な物が彼らを不自由にする。
彼らからお金と自由を巻き上げる方法はいくらでもある。
無知故に結ばされた契約。ギャンブルによる借金。
この世は持つものが、ますます富むように創られている。
だから、自由でも自由ではないのだ。

いくら大きな理想を掲げていても、人は弱い生き物だ。
肉欲で目がくらみ、誇り高き黒人と勘違いをした。
与えたものが望みの物ではないと拒否され、怒りに駆られた。
しかし、それらは全て自分が蒔いた種。
彼らが自由を欲しがらないと言うことを含めても、、、


他国に、いらぬおせっかいを焼く、
アメリカという国を批判した映画なのかもしれない。
しかし、それ以上のものをこの映画からは感じる。

確かにアメリカは、世界でもっとも成功した国のひとつなのだろう。
そして、その成功を支えた理念と思想を他国に押し付けたくなるのも、
むべからざることなのだろう。
しかし、今の世界は混沌としている。そして価値観もさまざまだ。
一見すると不幸な境遇にいるように見える元奴隷たち。
しかし、彼らは自由意志で不自由を選択し、
多数決とは違う形で自治を行っていたのだ。
そして、それは70年にわたり彼らに安定した生活を提供していたのだ。
たとえ、彼らが無知故に自由に行動できる権利と責任を放棄したとしても、
否定はできない形態なのだろう。

この映画のもっともネガティブな部分は、
純粋な情熱や崇高な理念だけでは、
人は判りあえないということだと感じた。
私利私欲を捨て、自分の理想のためには空腹にも耐え、
先頭に立って改革を進めたグレース。
しかし、その情熱や純粋さだけでは人は変わらない。
人を変えることは出来ないのだろう。

人々に良き方向に変わって欲しいと願ったグレース。
その願いは裏切られ、拒絶され、救済にすらなりえなかった。
人を導くということの、傲慢さ、孤独、困難さが心に残る映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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