イン・ディス・ワールド  
2009.05.21.Thu / 21:21 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






夢を求めての危険な旅。
私たちの生活に当たり前のようにあるものが彼らにはない。
そして、それを得るためには、命の危険を伴う旅が必要だ。
彼らの旅の途中、失われてゆく自分自身。
自分の民族の服を捨てられ、自国の言葉を否定され、
自国の通貨を拒絶され、
ついには、命までをも奪われてしまう。
そこまでの、屈辱的でつらい体験を経なければ、、
彼らは、自らが望む未来と希望を得ることができないのだろう。
国を奪われ、生活基盤を奪われた民族の悲劇を描いた映画。


難民キャンプに暮らすジャマールとエナヤット。
祖国を追われた貧しい生活ではあるものの、
なんとか平和にだけは暮らすことができている。
しかし、ただ生きるだけの生活。
それだけでは人としては足りないのだ。
未来に対する希望のカケラすら存在しない生活。
未来と希望を求めて、イギリスへの亡命を決めたエナヤット。
空路ならば半日ほどなのだろう。
しかし、陸路は長く危険に満ちている。
そして、次に何が待ち受けているのか、
誰が自分たちをどのように搬送してくれるのか、
二人にはまったくわからない。
頼りになるのはお金だけ。
確かに、見知らぬ国への旅には常に不安が付きまとう。
しかし、彼らの不安は、私達以上のものであろう。

言葉も通じない。
民族の服も捨てられた。
しかも、自国のお金は使えない。
自国の誇りも、自身の存在も、否定され奪われてゆく。
旅の過程で徐々に自分自身を削られていく二人。
亡命とは、まさに奪われる旅なのだろう。
そして、ついにエナヤットは、
自らの命をも奪われることになってしまう。

もう、この世界にはいないんだ。
エナヤットの死を、そう表現したジャマール。
共に旅をした同族の死を悲しむ余裕はない。
受け入れて前に進まなければ、、、、
奪われ続けた先に見出した結論なのだろう。
しかし、イギリスに着いたとはいえ、ジャマールの未来に、
彼が望んだ希望は果たしてあるのだろうか?

短いカット割りに、
与えられるのは必要最低限の情報のみ。
しかし、このテーマにこの演出はピッタリだ。
あたかも自分が体験しているようにすら感じることができる。
映画の一つのすばらしい可能性を提示してくれた映画。


* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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