スターフィッシュホテル  
2009.05.28.Thu / 21:12 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






妻を心から愛し、しかし、他の女性に魅かれる男。
そんな矛盾が男に見せた世界。
それは自分が見ていたものとは、まったく異なった世界。
今まで自分は、この世界を理解しているものとばかり思っていた。
しかし、この世界は、多くの違う顔を持ち、もっと複雑で混沌としている。
そして、男は深く広がる闇の世界のほんの入り口で躊躇しているだけ。
混沌とした心の闇、その深遠さを描いた映画。
そして、とても美しくて儚い映画。



建築会社に勤め、ミステリー小説を読むことが趣味である男。有須。
それなりに優雅な暮らしをし、妻を心から愛している男だ。

ひょんなことから有須は、佳世子という女性と知り合い、
不倫の関係になる。
妻を愛しているのは、東京にいる自分。
佳世子に魅かれているのは、スターフィッシュホテルにいる自分。
しかし、この矛盾を受け入れることができない有須は、
佳世子との別れを選択する。しかし、妻は居なくなってしまった。
このような映画では、往々にして真相が明かされないのが常だ。
しかし、この映画では明確に真相が明かされてしまう。
トリックスターとは、誰なのか。
なぜ、有須の周りで起こっている出来事が小説に書かれてあるのか。
それは、まさに、すっきりとした解決、絵に描いた大団円。
しかし、それは、物事の上っ面だけを引っかいただけ、なのだろう。

「なあ、教えてくれ。俺があんたに何をしたっていうんだ。」
妻を誘拐し、自分にまとわり着くトリックスターに尋ねる有須。
しかし、それは馬鹿な質問だ。
なぜなら、このような事態を招いたのは有須自身の行いなのだから。

やっと妻が戻ってきた。
妻の不在中、自分にとって、
この世界で本当に大切なのは、誰であるのか、
実感できたはずだった。
妻とのやり直しを誓ったはずだった有須。
しかし、再び佳世子の元に向かってしまう。
判っていても破滅に向かう。
それこそが、人が心の奥底に抱える闇のだろう。

有須は、そんな闇を前に躊躇し、立ち止まり、
いったんは佳世子との別れを選んだ。
しかし、闇の世界を好んで選んだ佳世子。
叔父との忌まわしい関係、17歳での上京。
そんな境遇が彼女に闇を選ばせたのだろう。
どんな自分にでもなることが出来る心の闇を。
自分自身を失うことを引き換えに。

トリックスターとは、本当は誰だったのか?
もし仮に、佳世子の叔父だとすると、
ワンダーランドでの二十歳ぐらいの女性の焼死体は、
佳世子ということになるのかもしれない。
しかし、それ以上に感じたのは、
トリックスターは、有須の成れの果てではないのだろうか?
闇に呑まれて、すべてを無くし、狂ってしまった男。
だから、有須をも誘っていたのだろう。
人が定められた運命としての自分の様になることを。

美しくも妖しい、そして儚い映像美。
混沌とした心の闇、その深遠さを描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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