2009.06.11.Thu / 22:38 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






どんな人でも、他の人の何かの役に立って生きている。
そして、どんな人でも、他の人に助けられて生きている。
そんなことに気付いた人生は幸せだ。
しかし、そんなことに気付かなくても人は生きてゆける。
けれど、気付かない人でも心のどこかでは判っていたはずなのだ。
人は一人ぼっちでは生きられないということを。
人生の終焉に、自分の愚かな過ちに気付いた男。
大切な人を捨て、自分の人生を虚しいものにしてしまった。
そんな男が流す後悔の涙。そんな涙が身につまされる映画。
そして、天使は、どんな過酷な境遇に身を置いても笑顔を忘れない。
ジュリエッタ・マシーナの魅力が詰まった映画。


粗暴な大道芸人、ザンパノ。
そんなザンパノに金で買われるジェルソミーナ。

ジェルソミーナはきっと故郷を離れるのは嫌だったろう。
しかし、自分の家の貧しさ故に故郷を離れなければならない。
悲しみにくれると思いきや、その直後に海を見るジェルソミーナの顔は、
嬉しそうで、とても晴れやかだ。

ジェルソミーナを白痴と紹介する文章をよく目にする。
しかし、私には、そうは思えなかった。
むしろ、ジェルソミーナは周りの状況がよく判る女性のように思える。
彼女が白痴に見えるのは、悲惨な状況に哀しそうな顔をしながらも、
次の瞬間には笑顔になる、その切り替わり方が唐突に見えるからだと思える。
しかし、これはジェルソミーナの持つ特質なのではないだろうか?
どんな悲惨な境遇においても、彼女は彼女なりの悦びを見出すことができる。
芸人として旅に出てみなの前で踊れる悦び。
だからこそ、故郷を離れる時でも、哀しそうな顔が瞬時に笑顔に変わるのだろう。
しかし、故郷を離れるのは、やはり悲しくて寂しいことなのだろう。
芸はできない。料理もできない。
無理やりに妻にされ、しかし、サンパノは平気で他の女に手を出す。
故郷を遠く離れ、芸人の旅に出たジェルソミーナ。
打たれながらも、がんばって芸も覚え、
人を笑わせ、お金も稼ぐようになった。
人に自分の芸を見せる時のジェルソミーナは、とても楽しそう。
しかし、ザンパノは自分をどう思っているのか?
ついにザンパノの所から飛び出してしまうジェルソミーナ。
けれど、ザンパノに捕まってしまう。

ザンパノが警察に捕まった時、
ジェルソミーナは自由になれるはずだった。
けれど、私は何の役にも立たない女。どこに行っても同じ事。
そんなジェルソミーナにザンパノの悪友は応える。
ザンパノは、なぜお前を連れ戻したのか?
ザンパノはきっとお前を愛している。
けれど表現の仕方が判らないんだ。
お前だけが、そんな、かわいそうなザンパノのそばに居ることができる。
つまり、ザンパノに、お前は役に立っているのだ。
それを聞き、とたんに元気になるジェルソミーナ。
自分は必要とされているんだ。
しかし、反対に、それを説明したザンパノの悪友の顔が曇る。
ジェルソミーナの選んだ道が、彼女にとっては、
とても不幸な道であることを知っていたからだろう。

ザンパノと共に生きるジェルソミーナ。
しかし、ザンパノは泊めてもらった修道院で盗みを働き、
さらに悪友を殺してしまう。
そしてジェルソミーナは気がふれてしまう。

なぜ、ジェルソミーナは、気がふれてしまったのか?
ザンパノの悪行を止める事ができなかったジェルソミーナ。
共に生きてもザンパノは何も変わらない。
そんな絶望がジェルソミーナをおかしくしてしまったのか?
どんな物でも何かの役には立っていると教えてくれたザンパノの悪友。
思えば彼だけが、ジェルソミーナのことを一人の人間として接し、
認め、励まし、支えてくれていたように思える。
そんな精神的な支えが、
彼女にとっての希望がなくなってしまったからなのだろうか?

サンパノは、やはりジェルソミーナを愛している。
気がふれた後のザンパノは、
ジェルソミーナに優しく接しているように思える。
だが、ザンパノはジェルソミーナに対して、
どうすることもできない。

共に生きることは、出来たのかもしれない。
しかし、毎日、人を殺したと責め続けられたザンパノ。
ついにザンパノは、ジェルソミーナを置き去りにする。
それは一時の苦痛から逃れる為、本能的に選んだ道。
お金を枕元に置き、毛布を掛けて、
好きだったトランペットを枕元に置く。
それは罪滅ぼしというよりは、愛情の表れであったように思える。

数年後、ジェルソミーナの死を知るザンパノ。

大切な者を捨ててきてしまった。そして二度とは戻らない。
捨てた後に感じる後悔。しかし、どうにも取り返せない。
捨てられたジェルソミーナは、一人寂しく、
見知らぬ土地で哀れな最後を迎えたのではないのだろうか、、

つらくとも最後までザンパノに寄り添ったジェルソミーナ。
つらくなり、ジェルソミーナを見捨てたザンパノ。
この映画が、とても哀しく身につまされるのは、
誰しも、似たような後悔を持っているからではないのだろうか?
捨てた後に初めて判る、その人の大切さ。
一時のつらさに負けて、大切な者を捨て去ってしまう愚かさ。
そして、激しい後悔。


確かに美人とは呼べない、アザミ顔のジェルソミーナ。
しかし、仕草といい表情といい、なんだかとても可愛らしい。
苦境にあっても、直ぐに笑顔を取り戻す。
そして、ピエロのメイクでの笑顔がとびきり素敵。
とても魅力的な役をマッシーナが見事に演じきっていた。
ジュリエッタ・マシーナの魅力が詰まった映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.700 / タイトル ま行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.