ワルキューレ  
2009.08.20.Thu / 20:12 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






祖国を、ヨーロッパを無用の戦火から救うため、命を懸けた人々。
ヒトラーの暗殺を計画し、しかし、失敗してしまう。
歴史を知っている人には、この結末は明らかではあるものの、
緊迫した画面から、最後まで目を離せなかった映画。
そして、ドイツ人は決して彼だけではない。
クーデターという激動な事件の中で、
躊躇する者、保身を図る者、未だに独裁者を信じる者、
しかし、祖国の名誉と隣人の生命を守ろうとした人々も、また存在した。
けれど、失敗してしまうクーデーター。その空しさ。

この映画は淡々と起こった出来事を描写しているようにも見える。
しかし、そんな中からも感じることは沢山ある。
むしろ、淡々と描いた方が感じることが多かったのかもしれない。
そんな沢山のことが印象的な映画。


膨張の過程から収縮へと向かいつつある戦局。
圧倒的優位な状況から、徐々に敗戦へと向かいつつあるドイツ。
このままでは、ドイツはおろか、ヨーロッパ全土は、
連合軍とドイツ軍との戦争で灰となってしまう。
未だに勝利を信じる者、成り行きに身を任せる者、
敗戦を感じつつもドイツと運命を共にしようとする者。
しかし、敗戦を憂い、これ以上の悲劇を止めたいと願う人も、また存在した。
ユダヤ人に対する野蛮な行為により、
ドイツの誇りが失われたと嘆くシュタウフェンベルク大佐。
彼もまた、無用な犠牲を避けたいと願う軍人の一人だ。
最初のヒトラーを暗殺する計画。その失敗。
ヒトラー死後のドイツを統治するためのワルキューレ作戦の改定。
それにはヒトラー自身のサインが必要だ。
序盤から緊迫した画面の連続。
そして、実行されるヒトラー暗殺計画。

ヒトラーは死んだのか?
不確かな情報に躊躇する軍人たち。
しかし、シュタウフェンベルク大佐を見殺しには出来ない。
今しか、チャンスはない。
ヒトラーの死を確認できないまま、決行されるワルキューレ作戦。
そして、予備軍司令部に集う同志たち。

ドイツ人は彼だけではない。
予備軍司令部に集う同士の多さ、その誇らしげな顔。
そして、自らの保身を考えずワルキューレ作戦を決行した彼らを見ていると、
確かに、そう実感できる。
彼らは、ヨーロッパ全土を救おうとしたのかもしれない。
しかし、それ以上に、
自分たちの知っている人、家族、隣人を救いたかったのであろうし、
愛するドイツという国の誇りを守りたかったのであろう。

しかし、失敗してしまうクーデター。
直接的な原因は、ヒトラーを暗殺することが出来なかったから。
そして、ベルリン防衛隊隊長や発令所所長を仲間に引き込まなかったから。
あるいは、シュタウフェンベルク大佐が暗殺実行者と反乱軍指揮という、
重要な役割を兼務しなければならなかったから。
もし、反乱軍指揮の必要が無ければ、彼は鷹の巣に留まり、
ヒトラーの死という重要な情報を自ら確認できたであろう。
理由を挙げればきりが無いのかもしれない。
しかし現実的には、クーデターや暗殺という方法での一発逆転は、
かなりの困難が付きまとい、成功させるのは至難の業ということなのだろう。

「ヒトラーは死んだはずなのだ。俺は爆発を確認した。」
クーデター実行中の高揚感。しかし、失敗を悟った後の挫折感、空しさ。
そして、処刑されてしまうシュタウフェンベルク大佐。
彼を庇うがごとく銃口の前に立ち、先に死んでいったヘフテン中尉。
シュタウフェンベルク大佐の意志に共感しての行為なのだろう。
その姿がとても印象的。

緊迫感満載の、この映画。
しかし、それでも、起こった出来事を淡々と描いているという印象が拭えない。
登場人物たちの背景が十分に描かれていないのも理由の一つであろう。
そこを描くには時間が足りなかったのかもしれない。
しかし、私には、あえて淡々と描いたようにも思える。
クーデターというもの、その顛末を描きたかったからのように思える。

クーデターや暗殺で政権を奪うという方法は、
その目的が、権力を私物化するのではなく、
多くの人の命を救うことが目的であったとしても、
許されることではないように思える。
だからこそ、この映画は、その顛末を、失敗した結果を淡々と描いたように思える。
しかし、手段は別としても、彼らの志は立派なものだ。
惜しむらくは、クーデターや暗殺という方法しか残されていない状態にまで、
来てしまっていたことなのだろう。
これは、ヒトラー一人の罪なのではなく全ての人間の罪なのだろう。

そんな沢山のことが印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.719 / タイトル わ行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
緊迫感が随所にあった割には
淡々とした印象がほんとうに強い作品でしたね。
トム・クルーズ主演なのに娯楽性のあまりない作品でした。

私はヒトラーは怪物だと思っているので、
ヤンさんが最後に書いている「全ての人間の罪」の
意味があまりよく分かりませんが、
ドイツ人はヒトラーだけではないという事を
世に伝えたかった作品なんだなと思ったし、
それは上手くいったんじゃないでしょうか。

2009.09.12.Sat / 11:38 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

 最後は少し端折って分かり難い感想に成ってしまったかもしれません。すいません。
 ヒトラーは確かに怪物であり独裁者なのですが、彼が最初から怪物だったわけではなく、突然、独裁者に成ったわけでもありません。国民が選挙で彼に票を投じ、彼に権力を与え、彼の作った政府を承認した結果、彼が怪物となり独裁者になってしまったのです。というわけで彼を止めなかったこと、止める術がクーデターしか残されていない状況まで何もしなかったという点においては、すべての人間に罪があるように感じました。ですが「全て」という表現が広すぎましたね。でも、私たちも何同じ過ちを繰り返さないとも限らないようにも感じました。

 それじゃ、また。

2009.09.12.Sat / 21:01 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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