リリイ・シュシュのすべて  
2003.05.23.Fri / 22:21 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。

14歳のリアル
ここで描かれている悲惨なエピソードは、14歳のリアルとは思えませんでした。
というか思いたくありませんでした。
しかし、ここで描かれている痛みは、14歳のリアルでしょう。
しかも、現代だけに存在する痛みではない、
エピソードや程度は変われども、分かる人には分かる痛みだと思いました。



昨日までと同じ日常や幸せが、今日は突然豹変してしまう不安定性。

抜け出したい。でも抜け出せない。
行きたくない。でも行かなければならない。
死にたい。でも死きれない。
彼らが住む学校という小さくて複雑な社会の閉塞感。

際限もなく落ちていく。落ちても落ちても底は見えない。
そのあまりの深さに感覚は麻痺して、もう恐怖は感じない。
引き返せないとわかっていても、いや、分かっているからこそ、
落ちることの意味を直視しない。
そして、大人たちは少年達が落ちるのを止めるには、
遥かに遠すぎる。
何に対してなのかわからないが、常に感じるいらだたしさ
歯止めの利かない、容赦のない残酷さ

どこにいくのか、なにをしたいのか?
誰も自分をわかってくれない。
だが、自分から自分を語ろうともしない。
限りなく断絶された関係。

彼らは、その中で息を殺すように、個性を殺を殺し、
目立たないようにして、なんとか生活しています。

星野と雄一にとっては、リリイの世界だけが、
本当の自分を安心して語れる場所でした。
その世界では、お互いのよき共感者となれました。
しかし、現実世界では、結局はお互いを拒絶し、理解にまではいたりませんでした。

星野は、雄一を多分「フィリア」とは知らず、
リリイの世界に入るのを、はげしく拒否します。
雄一は、星野を「青猫」と知って、自らのリリイの世界が壊れたことを知ります。
彼らは、現実世界の住人に理解されることを拒絶したのです。

レイプされても、落ちるのを踏みとどまった少女を見たとき、
彼らの何かが変わります。
いままで、あいまいにしてきた現実を
直視せざるを得なくなってしまったのかもしれません。
抜け出せない現実、戻れない昔を直視したとき、死を選びました。
変えられない今、変えようとしない未来を直視したとき、嘔吐します。
壊しても壊しても、本当の自分にたどり着けないことを直視したとき、
叫ばずにはいられなかったのでしょう。

彼らの痛みがなんとなくですが、判るゆえに、雄一や星野に、甘えるなともいえず、
しかし、彼らの甘えは許すことができない、
ですが、久野さんのように強くもなれそうに無い、
私には、同情もかわいそうという感情すらわきあがらない、
救いも無い、ひたすらに痛い映画でした。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.73 / タイトル ら行 /  comments(0)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
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