ベロニカは死ぬことにした  
2009.12.10.Thu / 21:48 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






自分自身が大嫌いだから、
自分自身を大切にすることができないでいた女性。
ある日気づけば、毎日が単調で同じことの繰り返し。
自分の人生に、こだわりが無ければ、
変化も充実感もなにもない、からっぽの日々。
自殺未遂の果てに、巡り会ったのは、
自分の世界に自分なりのこだわりを持った人々。
そんな様に生きてみたい。
そう、思えた時、過去の自分は、そこで死に、
新しい自分が誕生したのだろう。
新しい自分の誕生を描いた映画。

説明的で哲学的ですらある台詞の数々。
ファンタジックなサナトリウム。
演劇風でステレオタイプの配役。
役者さんたちは、その意図を理解し、上手に演じていたように思える。
すくなくとも雰囲気創り、世界観造り、という点においては、
とても調和が取れた美しい作品となってはいる。
しかし、映画が語りたいテーマと作風とがミスマッチで、そこが残念な映画。
少なくとも、このようなテーマを扱うのに、
人の生き様を現実的に描かずして、雰囲気創りを優先させたのは、
個人的には失敗だったのではないかと感じる。



なんでもあるけど、なにも無い世界を生きているトワ。
自分の人生に欲が無ければ、この世の中は物に溢れている。
けれど、欲しいものが無ければ、なにもないのと同じ。
トワは、自分の人生を生きてはいない女性だ。
もっと若かった頃には、何かを選択するには早過ぎると思ってた。
だから母親の期待通りの生き方をしたのだろう。
今は、変わるには遅すぎると思っている。
失敗した後は、新しい人生を生きることに、臆病になってしまったのだろう。
トワは、母親の期待通りには生きられず、父親との大切な思い出も否定され、
自分自身の人生の生き方や、こだわりも持てず、
生きる意味も見失い、死を選んだのだろう。
しかし、トワは、単に自分以外の世界を知らなかっただけなのだ。

自殺未遂の果てに連れて来られたサナトリウム。
そこには、様々な人がいた。
他人に受け入れられなかったにもかかわらず、
自分自身の世界を頑なに持ち続け、そこにこだわりながら生きている人々。
自分がしたかったボランティアを否定された女性。
初恋の人が今だに忘れられない女性。
昔は自分が嫌いだった、しかし、今は自分が大好きな婦長さん。
こだわりを持った生き方を知って、それをうらやましいと思い始まる、トワ。

自分自身をさらけ出す事。恥ずかしい所も、醜い所も、すべて含めて。
そうすることによって、過去の自分を葬ることが出来るのだろう。
そうすることによって、自分を他人の中に生かすこともできるのだろう。


この映画は、トワが自殺を試みて海に身を投げてから浮かび上がるまでに、
トワが見た夢であるという解釈も成り立つかもしれない。
しかし、ショウコの旅立ちまでをも夢とするのは無理があるように、私には思える。
別な解釈としては、サナトリウム自身が生の世界と死の世界の境界線上に存在する建物であり、
死に逝く者と、まだ生きなければならない者とを分別する役割を持っている、
というものもある。
院長は、さしずめ、閻魔大王様のような役割を持ってたのではないのだろうか?



新しい朝日を見た時、果たしてトワは、何を考えるのか?
それは院長にとっても賭けだったのではないのだろうか?
しかし、トワは生きることを決める。
水から浮かび上がるトワの姿は、彼女の新しい誕生を象徴しているのだろう。

こだわりを持って、自身を大切にして生きる事。
そんな生き方を知ったトワ。
彼女の新しい誕生を描いた映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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