父/パードレ・パドローネ  
2010.01.26.Tue / 22:00 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






パドローネ(ご主人様)として家族の中に君臨するパードレ(父)。
父の行為は横暴だ。しかし、そこには家族への愛があった。
父により制約が課せらてしまった不自由な生活。
しかし、そこには、様々な事に感動できる豊かさがあった。
時の流れ、父の老い、息子の成長と独立、旅立ち。
ここに来て、父は生き方を変えなければならなかったのかもしれない。
しかし、息子を愛しているにもかかわらず、
生き方を変えることができなかった父。
けれど、結局のところ、そんな親父の頑固さが、
息子達を正しい方向に育てたのだろう。
それは、不器用ながらの父親の愛があったからこそなのだろう。
そんな頑固親父を描いた映画。

一つ一つのシーンがとても丁寧に撮られた映画。
大きくて劇的な物語の流れは持たない映画。
しかし、点と点とが紡がれたような、静かで情緒が溢れた映画。



まだ、幼かったカビーノ。
しかし、学校での生活は突然終わりをつげ、
生活のため一人山で羊飼いをさせられる。
それを強制したのは、父親。
友だちとも遊べず、山では一人ぼっち。
そんな孤独に一人で耐えなければならないカビーノ。
そんなカビーノに仕事を強制させ、
時には体罰によって自分自身の持つ規則を押し付ける父親。
カビーノにとっての父親は、まさにご主人様。
否応無しに父親に従わざるを得ないカビーノ。
時が過ぎ、孤独のままに育ったカビーノ。
極端に制限された外界とのつながり。
それ故に、外からもたらされる全ての事柄は、
彼にとっては、とても新鮮で感動的。
音楽を手に入れたカビーノは、その音楽により、
遠くにいる自分と同じ境遇の羊飼い達と会話をする。
この時、カビーノは言葉の持つ素晴らしさを理解したのだろう。

時代は流れ、世界は変化し続ける。
父親が、家族の中でパドローネとして君臨できた時代も終わりを告げる。
父親の目論見はもろくも崩れ、
オリーブは安く買い叩かれ、
自然も敵に回り、全財産を売らなければならなくなってしまった。
それでも父親はパドローネとして家族を導こうとする。
「わしが負けたと思うな。」
「わしの頭は決して負けない。」
このつぶやきは、変わってゆく社会への不安の現れであり、
自らを安心させようとする自らへの言葉なのだろう。

島の外に出たカビーノ。最初は何もかもうまくはいかない。
しかし、周りの親切に助けられ、様々な経験により、自らを発見してゆく。
けれど、真の自立を果たすには、父親からの独立が不可欠なのだ。
最後には父親から離れ、自身の自立を目指すカビーノ。
心の底では息子の自立を認めてはいるものの、
表面的には、カビーノの旅立ちを拒絶し無視する父親。
振り上げたこぶしを下ろすことができない父親が痛々しい。

果たして、カビーノは幸せだったのか?
何もなかった子供時代。
しかし、それ故に豊かな感受性が身についた。
それは彼らの中で、代々受け継がれてきた教育なのかもしれない。

父親のカビーノに対する育て方は、正しかったのか?
今の世の中ならば、幼児虐待と告発されるのかもしれない。
しかし、父親には確かにカビーノに対する深い愛情があった。
学校からカビーノを連れ戻す際、カビーノの失態を笑う学友達。
そんな子供達に父親は怒鳴る。「息子は明日のお前達の姿だ。」と。
それは、息子の誇りを取り戻したいと願う親の気持ちなのだろう。
学友達は、父親の怒鳴り声を聞いて、
初めてカビーノの想いを理解できたのだろう。
あの失態も仕方なかったことなのだと。
だからこそ、カビーノは真っ直ぐに育つことが出来たのだろう。

しかし、それらもすでに古き良き時代の出来事になりつつある。
時代は変わり、父親がパドローネとして君臨できない時代。
幾ら家族を深く愛していても、
父親が無力をかみ締めなければならない時代に。

失われつつある頑固親父を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.758 / タイトル た行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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