赤い文化住宅の初子  
2010.01.28.Thu / 22:49 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






夢も捨てた。希望も捨てたはずだった。
しかし、心の底で捨てきれずにいる想い。
父親に捨てられた。母親には死なれた。
貧困な生活にあっては、
他人が示す中途半端な優しさも、かえって毒。
なぜなら彼らは、まったく別な世界に生きている人々だから。
そんな生活にあって、自らの希望は捨てたはずだった。
なぜなら、叶うはずの無い夢を見て、傷つくのは嫌だから。
しかし、捨てられずにいる希望。
それは、家族が彼女に与えた愛情の故なのだろう。
最後には自らの夢を真っ直ぐに見つめることが出来た少女。
過酷な境遇にあってさえ、夢を見る力を取り戻した少女を描いた映画。


赤い文化住宅に住む、初子。
父親には捨てられて、母親には死なれて、
兄と二人きりの貧しい生活を送る中学生の女の子。
本当は三島君と一緒に高校に行きたかった。
けれど、初子は、兄の言うままに高校行きを諦めるしかなかった。
生活費をパチンコですってしまう、どうしようもない兄。
しかし、兄は全くの悪人ではない。
むしろ、兄は自分の無力さに腹が立っている善人のようにさえ見える。
本当は妹に高校に行って欲しかった、しかし、行かせる事ができない自分。
あまりに大きな責任を背負わされ、しかし、その責任を捨て去ることも出来ず、
兄は一人苦しんでいるのだろう。

初子が、赤毛のアンを嫌う理由。
世の中、そんなうまい話はあるわけがない。
そんな話があるのであれば、なぜ自分には、
そんな素敵なことが起こらないのだろうか。
夢を見ることへの諦めが、初子がアンを嫌う理由なのだろう。
それでも、いつかは王子様が現れて欲しい、
そんな願望を捨てきれずにいるのだろう。

他人が示す中途半端な優しさも、初子にとっては、かえって毒。
なぜなら、彼らは初子の生活と苦しさを理解してはいないから。
そして、初子の望みを理解してはいないから。

どんなに貧困な生活にあっても、初子はぐれない。兄を憎まない。
それは幼い頃の経験が、そうさせているのだろう。
母親に教わったあや取り。兄と遊んだ経験。
家族にもらった愛情が初子を、今の生活に踏みとどまらせているのだろう。
最後まで父親が守った母親の写真。
父もまた、家族を愛していたのだろう。
家族は、すでに失われてしまった、そんな絶望が家に火を着けさせたのだろう。
しかし、家族の間に愛情は確かにあったのだ。
そして、そんな愛情が初子に夢を捨てさせて、
しかし、最後には夢を取り戻す原動力になったように感じる。

「いつか誰かが助けてくれると思ってるでしょ」
けなげにも、今の苦しい生活に耐えている初子。
しかし、本当は、それだけではダメなのだろう。
王子様が現れるのを待つだけではダメなのだ。
欲しいものは、たとえ手に入れ難くとも、自分自身で望まなければ。
手に入らなかった時の苦痛と絶望を避けるために、
捨てたふりをするのでは、いつまでも、それは手に入らない。

三島君と離れ離れになる別れの日。
初子は、初めて自分の望みを三島君に対して口にする。
その望みが叶う日が来ることは、無いのかもしれない。
しかし、自分の望みに素直に向き合うことが、
自分が幸せになる為には、必要なのだろう。

最後には自らの夢を真っ直ぐに見つめることが出来た少女。
過酷な境遇にあってさえ、夢を見る力を取り戻した少女を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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