僕らのミライへ逆回転  
2010.03.10.Wed / 20:42 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






過去に置いてきてしまった物たち。
未来を生きるには不要になるかもしれない物たち。
ある一部の人々にとってのみ価値のある物たち。
そんな物たちを本当に忘れてしまっていいのか?
そんな物たちを本当に捨ててしまっていいのか?
手作り感溢れる映画。
それを上映する街中の小さな映画館。
自分を育ててくれた故郷。
心のよりどころとなってくれていた故郷の英雄。
そして、その生家。
時代は変わり、今は、それらにとって変わる物が
出てきたのかもしれない。
けれど、どうか、それらを簡単には切り捨てないで欲しい。
この世界は多様で雑多。
個人にとっての大切なものは個人の数だけ存在するはずなのだから。
そんな心情に溢れたファンタジー映画。



フレッチャーが営むレンタルビデオ屋は、
今時VHSしか置いていない時代遅れのレンタル屋。
しかし、実はそこは、
伝説的なジャズ・ピアニスト、ファッツ・ウォーラーの生家。
それを誇りに育ったマイク。
マイクはフレッチャーから店の留守を任されたにもかかわらず、
友人であるジェリーが磁気を帯びてしまい、
すべてのレンタルビデオが消去されてしまった。
こうなったら自分たちで撮るしかない。
こうして始めたSweded Movie作り。
しかし、この手作りビデオが思わぬ反響をもたらしてしまう。

なぜ、こんな粗末な手作りビデオが客に受けるのか?
それは、この映画のお約束と言ってしまえばそれまでだ。
けれど、それなりの理由があるのかもしれない。たとえば、
最近流行のCGとは違い、工夫の跡が丸分かりの手作り感が受けたとか、
オリジナルの何が面白いのかを知っている人間が作ったから、
などなど。

この手作り映画は、オリジナルの再現というよりは、
それを観た時の、自らが楽しんだ記憶の再現、
というほうが適切なのかもしれない。

そして、きっと、ゴンドリー監督は、
こんな世界がとても大好きなのではないのだろうか?
手作り映画が受ける世界。
そして、見る側がいつの間にか撮る側に移り、
その喜びを共有してしまう世界。
確かにオリジナルの完成度から比べれば、
金を取ることさえ、はばかられる様な出来栄えの映画なのだろう。
そして、この手作り映画はとても私的な映画であり、
ごく一部の人にしか受けない映画でもある。
しかし、逆に言えば、ごく一部の人間にとっては、
唯一無二の宝物にもなり得る映画なのだ。


ドライビング・MISS・デイジーは確かに名作だ。
しかし、それは万人にとってではない。
ドライビング・MISS・デイジーをリメイクすることに
難色を示す、マイク。
マイクにとっては耐えられない作品なのだ。
人の数だけ宝物があれば、
一つの作品に対して、人の数だけの想いが存在するのだろう。


「私たち、今回は悪役ね。」
評判が評判を呼び、しかし、それが盗作であるが為に、
せっかく作成されたビデオは破棄されてしまう。
それを悲しげに見守る市民たち。
破棄を執行した役人を演じるのが、
ゴーストバスターズやエイリアン2でヒロインを演じた、
シガーニー・ウィーヴァー。
しかし、破棄を目の前にしての、この台詞。
「私たち、今回は悪役ね。」
それは、この手作り映画のよさが分かっているからこその台詞なのだろう。
それと同時に、ゴンドリー監督は、商業映画を否定してはいない、
ということも、この台詞からは感じられる。
あんな映画もあれば、こんな映画もある。
それらはお互い両立して存在してもよい映画なのだ。


市の区画整理で立ち退きを余儀なくさせられるビデオ屋。
しかし、ここは、ファッツの生家のはず。
そう、主張するマイク。しかし、それは実は、フレッチャーの嘘。
確かに嘘なのかもしれない。
しかし、それを信じて、それを誇りにして育ったマイク。
彼にとっては、その話は宝物なのだ。
だからこそ、最後には映画に残そう。
そして、自分の宝を皆で共有しよう。
その価値が分かり、その価値を認めてくれる人々と共に。
そう考えたのだろう。

この世界は多様で雑多。
個人にとっての大切なものは個人の数だけ存在する。
だから、どうか、それらを簡単には切り捨てないで欲しい。
そんな心情に溢れたファンタジー映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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