この自由な世界で  
2010.03.18.Thu / 16:34 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






ただ、息子と幸せに暮らしたいと願っただけだった。
しかし、欲望は次第に黒く大きく広がり、
その手を犯罪に染めていってしまった女性。
手に入れたのは大金。
失ったのは、それ以外の全て。
しかし、それでも女性は、その道を引き返さない。
果たして、自由の正しい使い方とは?
自由という誘惑に溺れ、
自らを失っていった女性を描いた映画。



仕事を斡旋する派遣会社で働いていたアンジー。
シングルマザーで経済的にもあまり豊かではない女性だ。
しかし、セクハラをきっかけに派遣会社を解雇されてしまう。
もう、人に使われるのはこりごり。
派遣会社での経験を生かして、
新しく自らの会社を友人と共に興そうとする。
理想に向かって進むアンジーは、とても魅力的に映る。
バイクを駆り営業から人材公募まで、一人でこなす。
しかし、同時にとても危うく感じる。
無理をして、背伸びをして、何時か倒けてしまうのでは、、
そんな危うさだ。

最初は、息子と幸せに暮らすことだけが夢だった。
その為には、会社を大きくし、オフィスを構え、
正規に登録された会社にしなければ、、、、
悪い事とは判っている。けれど、あと少し、もう少し、、、
会社が軌道に乗れば、こんなことはしない。だから、もうちょっと。
そう友人に、そして自らに言い訳をして、
違法行為を行い、金をピンハネし、大切な人々をも騙すアンジー。

最初は、恐る恐る、しかし、慣れてくれば大胆に。
借金は完済したはずだった。
しかし、更なる儲けを目指して、手を黒く染めてゆく。
本当は労働者たちに渡せる金があったはずだ。
しかし、その金は自分の未来の幸せを約束してくれるはずのお金。
だから、渡すわけにはいかなのだ。

自分に好意的であり、協力的だったカロル。
しかし、アンジーは彼すら欺いている。
イギリスはひどいところだ。
そう言ってポーランドに帰ろうとするカロル。
最後の晩を共に過ごそうと誘われたが、それを拒むアンジー。
出会い方がもっと違っていたのなら、、、
アンジーはカロルの善意と好意を欺いていることに、
そして、ひどいイギリスの一部となってしまった自分に、
後ろめたさを感じていたのだろう。

父親も自分の仕事には理解を示さない。
しかし、自分は昼夜を問わず懸命に働き、金を稼いできた。
それら大金は自らの労働に対して、相応の報酬なのだ。
自分の行為の正当性を父親に認めさせたい。
だからもう、後戻りはできないのだ。

遂には友人にまで見放された。
街頭で見知らぬ男に殴られた。
息子を誘拐され、椅子に縛られて脅された。
他にも何度か、引き返すタイミングはあったはずだ。
しかし、道を引き返さないアンジー。
悪いとは判っていても、引き返すつもりは、もう無いのだろう。
息子はアンジーの仕事の汚さを、
うすうすは、感づいているのかもしれない。
しかし、いつか、愛する息子も自分の仕事の汚さを正確に理解し、
自分の元を離れてしまう日が来るのかもしれない。
しかし、アンジーは、それでも引き返すつもりは、もう無いのだろう。


搾取される側と搾取する側。
弱みを握られれば、どこまでも搾取される社会的弱者。
そんな社会の暗部を描いた映画かもしれない。
競争社会では、必要以上に欲し所有することが、
成功の証であると錯覚し易い。
そんな自由世界の矛盾、資本主義の冷酷さを描いた映画でもあろう。
しかし、私にとって印象深いのは、自由の使い方だ。
自由な世界であれば行動の選択は自由なはずだ。
そう錯覚して違法行為に手を染めていったアンジー。
時として人は悪いと知りつつも違法行為をしてしまうかもしれない。
それでも、通常であれば、人は上手に心にバランスをとって、
違法行為にのめり込まず、節度を保った人生を送るだろう。
しかし、一方で、
人は、ばれなければ、どんな酷いこともできてしまうのだろう。
心のバランスを失い、違法行為に走ってしまったアンジーのように。
自由という誘惑に溺れ、自らを失っていった女性を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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