幻の湖  
2010.03.25.Thu / 16:57 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




遂に見てしまった!!


この世には逆らえないものが沢山ある。
運命、時の権力者、法律や社会秩序。

個々人の価値観の違いにより、自分の思い通りにはならないこの世界。
しかし、それが、個人の心の中に、この世は不条理に満ちている、
という思想を芽生えさせ、結果として悲劇を生んでしまう。

自分にとって、どんなに大切な物でもあっても、
価値観が共有できない人々とは、
その意味も価値も分かってはもらえない。自分の願いも届かない。

戦国時代からの怨念を背負ってしまった女性。
そんな女性が大きな不条理と戦い、
最後には勝利を掴むまでを描いた映画。
(だと思う???)
そして、それが、本当の勝利なのか、私には疑問ではあるが、、、




雄琴のソープランド街で働く道子。
愛犬、シロとジョギングを日課にし、
何時の日にか、運命の男と結ばれる予感を抱いている女性だ。
しかし、シロが殺されることで、幸せな日々も終わりを告げる。
ただ、単に犯人に会いたい、あって話を聞きたい。
そんな単純な動機であったにもかかわらず、なかなか思うに任せない。
当然ではあるが日本の法律に従えば、
犯人である日夏にだけ、非があるわけでもなく、よって、
愛犬とはいえ、犬の死により実刑を受けることもない。
そして、会うことすら拒否は可能なのだ。
しかし道子にとってはシロはかけがえのない愛犬。
けれど誰にも、それを分かってはもらえない、理解してもくれない。

友人の協力により日夏の趣味がジョギングであることを知る道子。
シロとの大切な思い出であるジョギングで日夏に勝ちたい。
相手を追い詰め、へばらして、トドメを刺す。
東京で勝負を挑むものの、あえなく惨敗。
想いが強ければ叶うというわけではない。
どんなに強く願っても叶わない望みは存在する。
この時、道子は挫折と共にそんなことを感じたのではないのだろうか?

雄琴に戻り、求婚もされたようだ(本当?)。
自分は一人じゃないということを知る。
未来は明るく開けていくはずであった。
しかし、知ってしまった笛の伝説。

戦国時代、運命的な出会いをする、みつと長尾吉康。
これは運命だと信じていたのに結ばれることなく、
死んでしまう、みつ。
想いが強ければ叶うというわけではない。
どんなに強く願っても叶わない望みは存在する。
それが、とても悲しい物語。

偶然にも再開する日夏が、言ってはならない事を言ってしまう。
「湖に沈んだ女性で音楽を作る。」
その人の無念さを私はよく知っている。
なぜなら自分も同じ想いを抱いているから。
しかし、お前は知らない。理解もできない。
なぜなら、無念を与えたのは、お前のような人間なのだから。
再度のマラソン勝負に、ついに勝つことができた道子。


この映画からは、何かを伝えたい、という想いを強く感じる。
しかし、この映画は、とてもとっつき難い。
だから難解に感じてしまう。
最大の理由は、道子の性格描写にあると感じた。
ほとんど全編に渡り出ずっぱりの道子。
しかし、思い込みが激しい道子は、
見ているものから共感が得難いキャラクターになってしまっている。
この辺りは、性格を変えずとも描写方法で、
魅力あるキャラにすることも可能だとは思うが、
新人である南條玲子さんには荷が重く、
これもまた、新人監督である橋本忍監督にも
荷が重かったと思われる。
脚本から映画を構想する段階での技術不足が祟った結果のように感じる。

そして、とても悲劇的な映画でもある。
興行的に失敗した結果、稀有な才能を持つ橋本さんを、
長く映画界から遠ざけてしまう結果となった。
橋本さんの、それまでの実績から考えれば、
もし、この映画が興行的に成功していたら、
現在の日本映画界も違っていただろうと想像に難くない。
それがとても残念である。


個々人の思想、価値観の違い。
だから自分の思い通りに、この世界は動かない。
しかし、それが、個人の心の中に、この世は不条理に満ちている、
という思想を芽生えさせ、結果として悲劇を生んでしまう。
最後の道子の激走は、なにもシロの敵を討つためだけの走りではない。
この世から感じる不条理に打ち勝とうとするための走りなのだろう。
東京の仇は琵琶湖で討つ。これは、言い換えれば、
信長への恨みは日夏で果たす、ということなのだろう。
しかし、争いではなにも生まれない。
怨念のごとく鬱積する心の中の、この世の不条理に対する恨み。
それを解決する方法は、相互理解なのだろう。
最後に宇宙に祭られた横笛。
琵琶湖の両端を結ぶかのごとく、
あのような高みに永遠に立つような見地こそ、個々人に必要なのだろう。
しかし、最後に日夏を刺してしまう道子。
あのシーンは、どうにも残念に感じる。
日夏が自らの負けと非を認め、道子に謝ることこそが、
お互いの理解に繋がっていくのではないのだろうか?
スペースシャトルも時代劇もマラソンレースさえも許容範囲ではあるが、
あのシーンは、私的には、どうにも認め難いシーンではあった。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.777 / タイトル ま行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.