クローンは故郷をめざす  
2010.07.15.Thu / 21:37 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






人の命を失うということの重さ。
その重さを減らす方法など、この世界には存在しない。
なぜなら、記憶の中にある、失ったことによる悲しみは消せはしないから。
たとえ目の前にある命が本物に限りなく近くても、
存在自身が失われたという事実は決して消せはしないから。
もしかしたら、この映画は個のアイデンティティを描いた映画かもしれない。
しかし、それ以上に私に感じられたのは、人の命を失うということの重さ。
その重さこそが、個のアイデンティティを創り出しているのかもしれない。
そして、その重さが人の生き方に深く影響し、
その人の人生に深い色合いを醸し出しているのだろう。
人の命の喪失、その重さを描いた映画。


幼き頃、自らが招いた事故により弟を失った耕平。
その重さを背負いながら成長した男。
それは耕平の母親も同様なのだろう。

万が一、自分が死んでしまった時の為に、
クローンを作成することを承諾した耕平。
しかし、それは仕組まれた罠。
仕組まれた事故で死んでしまう耕平。
理性では理解している。
自分が愛した人はすでに死んでいる。
しかし、心では欲している。
変わりでもいい。なんでもいい。
その喪失を補う存在を、、、、、
「私たちは本当にお悔やみを申し上げなければなりません。」
そう言われた時の永作さんの表情。
悔しさと、しかし、どうしようも無い深い悲しみ。
永作さんの表情に、クローンの問題が端的に表現されている。


合法的な方法で生み出されてしまったクローン。
しかし、同時に蘇ってしまう、忌まわしい過去。
長い年月を掛けてつきあい、制御してきたであろう後悔。
しかし、生まれたばかりの彼には、そんなことはできはしない。
苦しみにうちひしがれるしかないのだろう。

大切な人を失い、しかし、クローンに、その代わりを求めた人々。
しかし、それは報われはしない。
娘を失った勅使河原博士。
娘のクローンを創っても、それは、むなしいだけ。
勅使河原博士の中でくすぶる想いが、共鳴音を聞かせたのだろう。

二人目のクローンは、記憶を制御され、まともなように見える。
けれど、自分を持て余しているようにも感じられる。
それは、自分が死んだことを知っているから。
そして、追体験するかのごとく味わう、命の喪失。
残念なことに、耕平という人間を完成させるには、
この追体験は不可欠なのだろう。
命を失うことを悔やむ経験がなければ、
本当の耕平にはなれないのだ。


人の命の喪失を補う方法。
そのために考え出されたクローンという技術。
しかし、それらは何も解決はしない。
痛みを軽減するどころか、痛みをより増幅させるだけ。
それほどに、人の命の喪失とは重いものなのだろう。
そして、人は、その重さを背負いながら生きなければならない存在なのだろう。

後半はロードムービーの様にも感じられる、この映画。
その旅は人間自身の旅なのかもしれない。
命を失い、その痛みを補うための旅。
しかし、終着点など存在せず、あてどもなくさ迷わなければならない旅。

人の命の喪失、その重さを描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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