真夏のオリオン  
2010.07.29.Thu / 20:46 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






戦争映画としては、突っ込みどころ満載で、
しかも物足りない。
しかし、人の志や生き方を描いた映画としては、
堂々としたものだと感じられる。
死ぬために戦うのではない、生きるために戦うのだ。
最後まで諦めない、その理由は生きるため、生きて帰国するため。
そして、人の命の重さと価値。
そんなことを正面から描いた映画。

見る前は、玉木宏さんが潜水艦の艦長を演じるということで、
正直、不安ではあったが、見事に演じきっていたと思う。
それ以外にも、吹越さんや吉田栄作さん、益岡さんがとても渋く、
脇を固めている。
そんな彼らの演技や渋さも見事な映画。


第二次大戦の終戦直前、敗戦が濃厚な日本。
それでも国を守るために戦場に赴く倉本艦長とイー77の搭乗員たち。
米国駆逐艦との攻防。
相手の癖を読み、知恵を絞って相手を欺き、
時にギリギリまで海底で我慢をする。
そんな攻防の中で相手を理解する、倉本艦長と米駆逐艦の艦長。
けれど、この映画の戦闘シーンは、
どうにも緊迫感が足りないように私には感じられる。
潜水艦が駆逐艦に補足されることの絶望感。
一歩間違えれば撃沈され、海底深く沈んでしまうという緊張感。
刻一刻と減少してゆく酸素、限りある魚雷の数。
せっかく盛り上がりそうな材料がそろっているのに、
どうにも盛り上がりが掛けているように感じられてしまう。
ストーリーが悪いわけではなく、役者が悪いとも思えない。
これは、演出が悪かったのだろうか?

そして、それ以上に感じられるのは、
この艦がとてもアットホームだということ。
「飯にしよう」という艦長の声、そして、
それを時計代わりに使用する乗組員たち。
どんな困難でも、艦長を信じる仲間たち。

そんな中で、しかし、浮いてしまっている回天搭乗員。
彼らは死ぬことを教え込まれ、義務付けられ、
目標にされてしまっている。
しかし、最後の活躍の場もなく、焦らされ、待たされている彼ら。
倉本艦長を慕っている乗組員とは対極の立場の人々なのだろう。


初めての戦死者を出してしまった時、
偽装の為とはいえ、死体を放出しなければならなくなった時、
きっと、倉本艦長の想いは、
彼の魂だけでも連れて帰りたい、
であったのだろう。
その願いを託し、「真夏のオリオン」を共に放出する倉本艦長。
それが、倉本艦長の思いもしない結果を生む。

最後の賭けにも破れ、離艦しなければならなくなった時、
しかし、同時に戦争も終焉を迎える。
今まで誇り高く戦ってきたが故に理解しあえた敵同士。
回天搭乗員が死ぬ為に艦をぶつけろ、と脅してきても、
やはり生きる道を選んだ倉本艦長。
けれど、この展開は当たり前すぎて、カタルシスに掛けてしまう。
多分、憎みあった敵同士が、しかし、「真夏のオリオン」で争いを止める、
と描いたほうがテーマは明確になったかもしれない。
親友を殺された倉本艦長。息子を殺された米駆逐艦の艦長。
その憎しみを越える瞬間を描ききれていないのが残念ではある。


死ぬために戦うのではない、生きるために戦うのだ。
そんなことを正面からストレート描いた映画。
もう少しひねりがあれば、より面白かったかもしれない。
そこが残念な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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