buy a suit スーツを買う  
2010.09.03.Fri / 20:44 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






自己を守るため現実逃避をした男。
そんな男を待ち、しかし諦め、
新しい人生を始めざるをえなかった女。
たとえ、二人で再出発をしたとしても、
多分、同じ過ちを犯してしまったであろう二人。
だから、女は確かめあうのは、もうやめようと言ったのだろう。
けれど、人間は、他人との絆を捨てきれない生き物。
生きていたのならば、情にほだされてしまったかもしれない。
こんな連鎖を断ち切る方法はあるのだろうか?
とても実験的な映画。そして迷いに満ちたような映画。




兄は、考えれば何でも結論が出ると考える男。
頭でっかちで社会に対する適応力に欠け、
自分を守るために、社会から逃げ出した男。
兄の主張する、人間は雑多なほうが良い、
という考えは正論なのかもしれない。
けれど、単に自分の居場所が欲しかっただけ、
雑多な方が自分の居場所もあるかもしれない、
そんな風に考えていたのではないかと感じられてしまう。
妹のとりなしで元妻に会い、再度のチャンスを懇願する。
兄の時間は川の袂で止まっていた。
そして、やり直しを切望していた。
だから、妹にも手紙を出してきっかけを創りたかったのだろう。
止まっていた時間を再び動かすのは、本人が望んでいれば簡単だ。
しかし、女の時間は動いていた。
兄を探し、待ち続け、しかし諦めざるをえなくなり、
新しい別な、しかし、望まなかったであろう再出発を余儀なくされたのだ。
だからこその、「Too late」だったのだろう。

この映画の題名は、「スーツを買う」。
スーツの意味する所は兄の親友が着ていた服であり、
社会に適応して生きていくということを象徴していると思われる。
であるならば、最後には兄がスーツを買って社会に適応し、
元妻であるトモ子さんとやり直すというラストが待っているように、
期待していた。
多分、市川監督ならば、そんな画を上手に撮るであろうと、
期待して観ていた。
けれど、「もうわたしら、確かめ合うのやめようよ。」
兄の時間は止まっていた。だから、今後も同じ失敗を繰り返すだろう。
現に兄が自慢げに説明した起業計画も、現実味が乏しいもの。
だから、この台詞は正解なのだ。
期待しないで、依存しないで生活すべきなのだろう。
でも、それはなんとも悲しい結論なのだ。

しかし、
「この台詞を思い出すと、なんだか勇気がわいてくる。」
と市川監督はメモを残されているそうである。
ここから先は推測でしかないが、市川監督は、
多くの人々、観客に期待されることを重荷に感じていた、
もっと自由になりたかった、なれる可能性があると想いたかった、
と考えていたのでは、と推測してしまうのは考えすぎだろうか?

最後には殺されてしまう(?)トモ子さん。
果たして、これは一体何を意味しているのか?
兄が失踪した3年間。
その間に様々な事情を抱え込んでしまったトモ子さん。
まさに、「Too late」を象徴していたのかもしれない。
それ以上に、こんな悲しい連鎖を断ち切る方法が、
これしか思い浮かばなかったのかもしれない。

とても実験的な映画。そして迷いに満ちたような映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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