インセプション  
2010.12.26.Sun / 20:00 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






夢と現実の境のあいまいさ。
夢が現実に強く影響し、逆に、
現実が夢に強く影響する。
そんな不思議な世界を刺激的に描いた映画。

アイデアは頭に入り込むと取り除くのは難しい。
感染力も強く、その人の行動、思考を強く支配する。
そして、人は信じたい物であれば、
簡単に信じてしまう、そして、支配されてしまう。
けれど人は、その支配からも意志の力で、
脱出することが出来るのだろう。
そんな人の悲しさ、しかし、力強さを描いた映画。



夢を共有することができる不思議な世界。
そんな仕組みを利用して、人の秘密を盗む。
または、人に思想を植えつける。
現実では不可能なことも、夢の中では出来てしまう。
物理の法則を超越した世界。
愛する人と永遠に近い時間を共に生きることも、
不可能ではない。
けれど、全てが自由というわけではない。
夢は現実に強く作用する。
現実の出来事も夢に強く作用し、
結果として夢を共有した人々を混乱させ、
普通の生活には、もう、戻ることは出来ない。

この辺りの込み入った設定が上手に説明されている。
初心者である、アリアドネの設定が上手に活用されていると感じた。


インセプションを依頼されたコブ。
植えつけるアイデアは単純でポジティブなほうが良い。
それはポジティブなアイデアほど、人は信じやすく、
信じれば信じるほどに、その思考に強力に支配されるからだろう。
父親から愛されたいと願っていたであろう、ロバート。
そして自分自身の力をも信じ、試してみたいと思っていたはずだ。
インセプションの結果は明示的には示されてはいないが、
多分、成功したのだろう。

モルも子供たちがいる世界へと、夫と旅立つ事を信じて疑わなかった。
それは、子供を愛し、夫を強く愛していたからだ。
だが、こちらは悲惨な結末を迎えてしまう。

愛する妻を失い、妻の死に罪悪感を抱いていたコブ。
それは、妻に施したインセプションが原因だとコブは考えたからだ。
確かに映画でも、そのように解釈するように描かれてはいる。
けれど、モル本人にも周りの人々にも責任が無かったとは思えない。
しかし、重要なのは、
妻を殺したのは自分だと、コブ自身が信じたかったということなのだろう。
そうやって、自分で自分を責めて、苦しみたかったのだろう。
けれど、その考えを誰かに救済してもらいたかったのだろう。

映画のラストでは、夢の世界から皆が無事に帰ってくる。
けれど、本当に帰ってこれた世界は現実なのか、
それとももう一層高い夢の世界なのか、曖昧なままで終わる。
それは観客が、このラストをどう感じるか、に委ねられているのだろう。

コブが望んでいた世界。
妻の死の罪悪感を、アリアドネの助けを借りて
過去のものにすることができ、子供たちとも暮らすことが出来るようになった。
誰かに植え付けられた幻想なのかもしれない。
けれど、私には彼が自身の力で勝ち取った想いと思いたい。
彼が長い時間を掛けて苦しんだ結果であると。

今の自分たちの思考は、本当に自分の考えなのか?
現実においても、それは曖昧だ。
たとえ夢を介さなくとも、強烈な思考はウィルスの如く人の心を支配し、
人は信じたいことを盲目的に信じてしまう性を持っているから。
けれど人は、そのような支配からも意志の力で、
脱出することが出来ると信じたい。
支配されてしまう性を持つ人の悲しさ、しかし、
迷路を抜け出すことができる人の力強さを描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.848 / タイトル あ行 /  comments(2)  /  trackbacks(3) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

本当に自分の考えなのか?
この辺りは、私なんか人の意見に左右されがちなので、
すごく曖昧なんですよ。
映画の感想でも、人からすごく良いと聞いたら、
なんかそう感じないといけないような気さえして、
自分の考えはこれだ!って言うのが
分からなくなってくるんですよね(^^;トホホ

さて本作、とても刺激的でミステリアスで、
いつまでも浸っていたいような世界でした。
夢か現実か、それを考えるのも面白かったし、
映像も 無重力や変化する街など、興奮度が高かったです。

2010.12.28.Tue / 17:03 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

自分の意識と他人との境目の曖昧さ。
この監督は、結構、こういうテーマが好きなようですね。
その境目は曖昧じゃないと思っていても、
実は結構曖昧で、その曖昧さゆえに自分を見失ってゆく、、、。

最後に回り続けるコマ。
果たして夢なのか、現実なのか。
でもYANさんの感想どおり、
前に進めたので、それで良かった。
ということなのでしょうね。

マトリックスの様でいて、
けれど、それ以上に刺激的な映画でした。

それじゃ、また。

2010.12.28.Tue / 22:37 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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