ぼくのエリ 200歳の少女  
2010.12.31.Fri / 20:08 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






初恋には危うさが付きまとう。
初めてのことばかりで、先が見えない。
向こう見ずで想いばかりが先走り、
純粋ゆえに傷つき易く、
そして、世界はとても残酷で無慈悲。
そんなことが分かっていても、
しかし離れることが出来ない。
諦めることも出来ない。
それは、お互いが何にも代え難き存在だから。
そのように思うことが出来るから。

過酷な運命を受け入れ、
それでも生き抜こうとする子供たち。

それは果たして
動物の本能なのか。
人としての性なのか。
初恋というものが持つ甘美な罠なのか。


見る前の予想は純愛映画。
けれど見終わった後は、恐ろしくて、
されど、とても哀しい映画。



イジメられっ子のオスカー。
バンパイアのエリ。
自分を理解してくれる人は、この世界に一人もいない。
居場所もどこにもない。
二人共に、孤独な魂を抱えた子供。

エリは最初はオスカーを遠ざける様でいて、
次第にオスカーに近づいてゆく。
お互いの孤独が共感したからかもしれない。
しかし、それ以外にも理由があるのだろう。

エリの為に血を集めるエリの父親。
しかし、彼は父ではない。
言葉は悪いが、ちょうど変え時が来たから、
エリはオスカーに近づいたのだろう。

エリの父親が、決死の思いで血を集めようとしたその日。
「彼には今日は会わないで欲しい。」
この台詞が哀しい。
けれど、この男は、
エリがオスカーと会うことを止めることができない。
なぜなら、エリにとっては生きる為に必要なことであり、
そして、そんなエリの生き方を、彼は受け入れているからだ。


自分の生き方、宿命を受け入れて欲しい。
そう、オスカーに告白するエリ。
逆に、エリはオスカーをどこまでも受け入れる。
差し出されたお菓子も、許可なく部屋に入ることも。

エリがオスカーに受け入れて欲しいと願う、エリの哀しい宿命。
何かを犠牲にしなければ生き物は生きられない。
それは血を吸い取られた犠牲者だけではない。
オスカーもまた犠牲者なのだ。
この初恋を成就させるには、
オスカーは人生の全てを犠牲にしなければならない。
そんなエリの生き方を受け入れなければならない。

最後には、二人で現実から逃げ出す、オスカーとエリ。
この時、オスカーは全てを受け入れる覚悟をしたのだろう。
目の前に居る、何事にも代え難き存在と共に生きるために。
けれど、本当にオスカーは自身の選んだ過酷な宿命を、
理解していたのだろうか?
今は恋人なのかもしれない。
けれど時が経てば兄になり、父になり、そして、
あの男のように別れる時が来ることを、、、

それでも、オスカーはとても幸せなのかもしれない。
けれど、それが、とても哀しい。


エリは人間の協力無くしては生きられない。
だからといって、エリにとって、
オスカーは、騙して利用するだけの存在ではない。
この境目は難しい。
エリは、はたして、
どんな想いで多くの男たちと分かれてきたのだろうか?
そして、どんな想いでオスカーを選んだのだろうか?

バンパイアになり死を選んだ女性。
他人を犠牲にする生き方しかできないのならば、
絶望のうちに死を選ぶ。その気持ちはよく分かる。
けれど、生きるべきか、死ぬべきか、それも難しい。

そんな過酷な宿命自身がとても恐ろしく、
そんな過酷な運命を背負わされたことがとても哀しい。
しかし、それでもオスカーに出会えたエリもまた、幸せなのだろう。
それが、とても哀しい映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

明けましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いします~★

ヤンさんの映画を深く読み取った感想を、
毎回、なるほど~と思いながら読ませてもらってます。
今年もまた楽しみにしてますね~

この映画、とても興味あるので、
観たらまたコメントしに来ます。

2011.01.05.Wed / 17:00 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします。

いや、YANさんのレビューも、
なかなか結構深いと思いますよ。
今年も、よしなに。

この映画は、好き嫌いが分かれそうな映画です。私としては雰囲気が結構好きな映画でした。YANさんも楽しんでもらえたら嬉しいです。

それじゃ、また。

2011.01.06.Thu / 23:02 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from YAN -

ヤンさん、こんばんは!
私もヤンさんと同じく、この映画を観終わって、
怖ろしさと哀しさを感じて、とても胸が痛くなりましたよ~

エリがオスカーに近付いた理由、
「ちょうど変え時が来た」って言うの、そうだと思いました!
エリには動物の本能を強く感じたんですよね。
オスカーを騙して利用するとは考えてないけど、
それが生きていくための本能なんでしょうね。

まるっきり子供の顔のオスカーが、それを受け入れるのが、
切なかったです。
本当の過酷さはきっと理解できてないだろうから。

とにかく、苦しくなるような余韻を残す映画でしたね。

2011.03.05.Sat / 22:10 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

 生きる為には、どんな過酷で残酷な運命をも受け入れなければならない。
そんな宿命が哀しくも恐ろしい映画でしたね。
オスカーはきっと、オスカーなりに理解はしているのだけれど、
それ以上に過酷であることが将来わかったとしても
受け入れざるを得なくなるんでしょうね。きっと。
そんなことも含めて、恐ろしくも哀しい映画でした。

 それじゃ、また。

2011.03.06.Sun / 14:49 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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