紀子の食卓  
2011.02.17.Thu / 21:15 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






この世界を幸せに生きるには、
与えられた役割を演じる必要がある。
父親の役、母親の役、姉妹の役。
そして、ライオンの役割、うさぎの役割。

役割を演じることを意識して生きている人々。
それは自分という人間を意識して生きている人々。
そして、自分が自分に関係して生きている人々。

レンタル家族。
偽物のはずなのに、とても幸せな家族。
本当の家族以上に本音を話せる家族。
それは、現実に疲れた人々が望む幻想。

役割を演じきって死ぬこと。
この世界では、誰かが犠牲的な役割を演じなければならない。
それは、現実に疲れた人々の幻想を満たすため。
けれど、彼女たちが、ウサギを演じるのは、
それが、彼女たちの願望だからではないのだろうか?

果たして、この世界に本物の絆は存在するのか?
役割を演じなければ絆は手に入らないのか?
そして、本当の自分を見つけることができるのだろうか?

血の繋がりを拒絶した少女。
血の繋がりを否定した女性。
冷めた目で血の繋がりを見ていたが、それでも何かを期待した少女。
それぞれが自分を発見し、それぞれの道を歩き始める。

昔ならば考えなくても生きていけた、
自分という存在。相手という存在。
そんな存在に向き合った少女たちと父を描いた映画。



田舎の町に住んでいる紀子。
退屈な毎日。無理解な両親。
そんな自分の置かれている退屈な現状に、不満と不安を抱えている少女。

まだ、赤ん坊の頃にロッカーに捨てられたクミコ。
レンタル家族というビジネスを運営している、
そして、血の繋がった家族という関係を否定して生きている女性。


偽物のはずなのに、本物以上に暖かなレンタル家族。
そして、自分の本音を、レンタル家族ならば素直に語ることが出来る矛盾。
それは各自が役割を認識し、それを演じているからだ。
それぞれの役割に込められているのは、
そうありたいと願う自身の願望なのだろう。
役割を演じ、願望を満たすことで、
自身の本当の考えや想いも見えてくる。
そして、語ることもできるのだろう。

けれど、目の前にいる相手を役割と割り切った関係であるとも思える。
目の前に居る娘は紀子ではない。娘という役割を与えられた少女。
だから、本音も言える。
相手の将来も真剣に心配する必要も無い。
物分りの良い父親を演じることも可能なのだ。

レンタル家族の中にいれば、自分の役割を自覚できる。
だから、自分という人間も良く見えてくる。
けれど、とても矛盾はしているが、
自分や相手という存在を見失うというのも事実なのだろう。



54人の女子学生の集団自殺。
それを演出したのは、クミコ。
多くの女子学生を先導して死んでいったサークルの仲間たち。
そして、決壊ダムは、役割を演じる中で死んでゆく。
レンタル家族として、誰かの願望を叶えるには、
誰かが犠牲にならなければならない。
それは自己の願望や人格、命すら消すことなのだ。
しかし、死にゆく彼女たちはとても幸せそうに見える。
それは、実は彼女たちも役割を演じる中で、幸せを感じ、
自身の願望を叶えたから、ではないのだろうか?
「バラが咲いた」を聞きながら死んでいった決壊ダム。
過去の経験からなのか、それとも、彼女の幻想なのか、
しかし、彼女は、こんな死に方をしたいと、願っていたように思えてならない。


レンタル家族が、とても幸せそうに見えた紀子。
それは、自分の父親と錯覚するまでに。
確かに、その幸せは自分の願望であり、家族に期待したこと。
しかし、最後には悟ったのだろう。
自分も本当の家族の中で役割を意識しなければ、
そんな幸せが手に入らなかったことを。

家族を否定して、役割を演じることに殉じようとしたクミコ。
誰かがウサギを演じなければ。
紀子の父親に自分を殺すことを勧めたのは、ウサギになろうとしたから。
けれど、本当は自分が死んで楽になりたかったから。
だから、この時の彼女は、ウサギではない。ライオンなのだ。
そして、延長時間を認めたのは、実は、こんな家族に憧れていたから。
自分が死にたいと願っていたライオンであったことに気づいた時、
そんな自分の願望に気づいたのだろう。


レンタル家族の中でウサギを演じつつも、しかし、ライオンを演じてしまう。
他人の願望の為に自らが犠牲になるようでいて、
しかし、実は自分の願望を満たしたいと考えている。
自分の役割を自覚することと、自覚しないこと。
そんな境目では、自己や相手を発見することはできないのだろう。

父親に何かを期待し、足跡を残し、シュミレーションまでして、
家を出た、ユカ。
そして、最後には旅立つ。
本当の家族の中でも、レンタル家族の中でも、
見つけられなかった自分を探しに。

昔ならば考えなくても生きていけた、
自分という存在。相手という存在。
そんな存在に向き合った少女たちと父を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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