善き人のためのソナタ  
2011.04.14.Thu / 22:05 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






国家保安省の手先であった男
その男が、監視の対象を愛してしまい、
そして、彼らの生活に干渉した結果、
思わぬ出来事を引き起こしてしまう。
そして、その出来事をきっかけに、
最後まで監視の対象たる二人を庇い続ける。
それは贖罪の気持ちがあったからか。
それとも、自身が属する世界が腐敗していたからか。
あるいは、彼らの生活があまりに眩しすぎたからか。

そんな男の後悔の念も、長い年月を経て、最後には救われる。

同じ女性を愛した男たち。
社会は彼らを敵対させようとした。
しかし、人間としてはお互いを理解しあえた二人。
社会が傷つけてしまった心への深い傷。
しかし、お互いを癒しあうことができる、人が持つ可能性。
それでも、癒し開放されるまでに費やさなければならない長い時。

人の心に大きな傷を残す社会体制の罪、しかし
それを乗り越えることができる人の持ついたわり、やさしさ。
それらが印象的な映画。



国家保安省で多くの政治犯を自白に追い込んできた男、ヴィースラー。
国家に忠節を尽くし、反体制には容赦のない男だ。

上司に連れられていった劇場。
その舞台に立つ女優、クリスタに一目惚れしてしまうヴィースラー。
しかし、クリスタには恋人がいる。それは劇作家であるドライマン。
そして、そのドライマンを監視するのが
次に与えられたヴィースラーの仕事。
監視をする相手であるドライマンに、
嫉妬にも似た感情を持ってしまったヴィースラー。
そのような仕事を与えられたのは、
ドライマンが反体制的な思考を持つというよりは、
権力者である大臣の横恋慕が理由だ。
党に忠節を尽くすというのは、権力者に媚を売ることなのか?
次第に、今の自分のあり方に疑問をもつようになるヴィースラー。

クリスタと大臣の密会をドライマンに目撃させたのならば、、、
きっと二人は喧嘩別れしてしまうだろう。
それは、とても見ものな光景だ。
嫉妬から、故意にドライマンに二人を目撃させたヴィースラー。
しかし、結果は思わぬ方向に転んでしまう。

すべてを理解したドライマン。そして密会がばれたことを悟ったクリスタ。
しかし、互いを責める訳でもなく、罵り合う分けでもない。
静かに、そっと寄り添い、お互いを癒し愛を確かめ合う二人。
二人の愛情の美しさ、愛し合う姿の素晴らしさ。
自分が犯してしまった罪の愚かしさと後ろめたさ。
様々な感情が、ヴィースラーに変化をもたらしたのだろう。
これ以降、二人に静かに歩み寄るようになったヴィースラー。
そして、二人の社会的地位や安全ばかりでなく、
二人の愛情さえも守ろうとする。

しかし、クリスタは大臣から憎まれ逮捕されてしまい、
最後には死を選ぶことになってしまう。
この時のヴィースラーの絶望感はいかばかりであっただろうか?
地下の単純労働に追い込まれてしまったことよりは、
結局彼女を殺してしまったことに対する罪の意識のほうが、
ヴィースラーにとっては辛かったのではないだろうか?

恋人を失ってしまったドライマン。
そして、自分が密かに守られていたことを知る。
いままでは何も知らなかった。けれど、全てを理解したのだろう。
そして、ヴィースラーを許したのだろう。
愛する人を失った痛みを分かつ者同士として。


このような悲劇を生んでしまった社会の体制。
そして、それ以外の多くの人の心にも沢山の傷を残したことだろう。
しかし、人が持ついたわりや、やさしさがあれば、
その傷はいえてゆくのだろう。
それには長い年月がかかるかもしれないが。

人の心に大きな傷を残す社会体制の罪、しかし
それを乗り越えることができる人の持ついたわり、やさしさ。
それらが印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.875 / タイトル や行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
アカデミー賞の外国語映画賞受賞作品はたいていハズレが無いですよね!
これも心に残る良い作品でした~☆

旧東ドイツの社会体制には驚かされる事ばかり。
非人道的と思える体制側にいて、
それまで味わった事のなかった人間的な感情、
愛やいたわりや優しさに触れて、
だんだん変化していくヴィースラーの姿が良かったですね。
ラストシーンの一言で、感動が溢れてきました。

2011.04.15.Fri / 16:51 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんにちは。

そういえば、この作品もアカデミー賞の外国語映画賞受賞作品でした。
この前の、「瞳の奥の秘密」もそうですし、
日本の「おくりびと」もそうですね。

ラストの一言は、とても上手な締めくくりでした。
それまで出会うことがなかった男たちの優しさといたわり、
その心情を理解したが故の台詞。
社会の体制や仕組みが、いくら非人道的であっても、
人は変われるし、
障害を乗り越えることはできるんだと感じました。

それじゃ、また。

2011.04.16.Sat / 13:54 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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