EUREKA ユリイカ  
2011.05.26.Thu / 20:12 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






この世界は、限りなく断絶している。
同じ体験をしたからといって、
同じ景色が見えるわけではない。

断絶しているから、命の尊さすら、
伝えることができないでいる。

特異な経験を経て、自らの孤独を思い知った男。
けれど、その孤独は、実は自身が蒔いた種。
他人との絆、この世界との絆を模索し、
最後には、その絆をつかむ事が出来た。

限りなく孤独に近い、自分、そして、この世界。
それでも、絆を結ぶことはできるのだろう。
長い旅の果てに、それを発見した男を描いた映画。




この映画は、大きく分けて3つのパートから成り立っているように思える。
突然のバスジャック事件で、沢井が自らの孤独と世界との断絶を悟り、
田村兄妹の家に逃げ込むまでが最初のパート。
けれど、いくら逃げても世界は自分を放っておいてはくれない。
そして、この断絶と孤独は、自身が蒔いた種であることを悟り、
バスで再生への旅に立つまでが次のパート。
しかし、各自の抱える心の闇は実は違っていた。
それでも、絆を結ぶことは大切なことなのだ。
最後に、梢は、この世界との関係を再構築する。
そして、沢井も梢との絆を結ぶ。
長い旅の果てに、沢井がそれを発見するまでが最後のパート。



突然発生したバスジャック事件。
その中で生き残ってしまった沢井。
しかし、世界は、とても彼に冷淡だ。
生き残ったことは、それ自身悪いことではない。
けれど、運転手という役目や責任上、
周りは彼に冷たかったのだろう。
彼の心がどのくらい傷ついているのかは、問題ではない。
事件の特異性、そして好奇心、妄想、残酷な想像力。
二年間の逃避行で、ほとぼりは冷めると思われた。
確かに、あの事件は忘れ去られたように感じられる。
けれど、世界は、同じように冷たく、自分には無理解。
その冷たさから逃げる為に、
同じく生き残ってしまった兄妹の元に身を寄せる沢井。



逃げてみても、世界は冷たい。
放っておいて欲しくとても、どこまでも追いかけてくる。
いわれなき、罪に問われ、自分が殺人者の眼をしていると言われてしまう。
黙っていると、都合の悪い時には口を閉ざすと嫌味を言われる。

元妻に、私とやり直す気はなかったのかと聞かれた時、
沢井は、本当はやり直したかったのだろう。
しかし、遅すぎた。自分が戸惑い躊躇している間に時は過ぎてしまったのだ。

最後に沢井は気付いたのだろう。
あの事件が起こる前から、世界と自分は断絶していた。
最初から壊れていた関係は、日常生活の中で埋没し、気付かされることもなかった。
けれど、事件がきっかけで、分かってしまったのだ。世界との断絶を。

時間がかかるかもしれない。自分たちの方法を見つけるのに。
けれど必要な時間なのだ。
兄妹と同じ経験をした秋彦ともに、世界との絆を再生しようとした沢井。

最初に立ち寄った事件現場。ここから始める、と沢井は言う。
多分、この時の沢井は、四人共に同じ景色が見えていると、
錯覚していたのだろう。けれど、見えていた景色は、
それぞれが抱える闇によって、異なっていたのだろう。




旅をしてみてわかってきたこと。

兄の直樹は、実は殺人者。
命の価値を、あの事件とその後の家族崩壊で失ってしまっていた。
かろうじて彼を、この世界にとどめていたのは、自分ではない。
妹の梢との絆が彼を、この世界に直樹をギリギリのところで留めていたのだ。
生きろとはいわない、けれど、死なんでくれ。
それしか伝える事が出来なかった無力な自分。

秋彦は、自分と似たような経験をしてきた、と言った。
けれど、彼の経験は、どこか共感ができない。
そして、直樹を隔離すべきだと主張する。
心に傷を負っても、普通の人のように振る舞うことを世界には強制された。
次には、それが出来なければ世界から完全に隔離されることが求められる。
そんな思想にNoを突き付けた沢井。

長い、長い、旅の果て。
今まで自分に係わり影響を与えてきた人の名を呼ぶ、梢。
自分を過ぎ去った人々、過ぎ去るであろう人、そして、自分。
そんな人たちとの関係。
梢は世界との絆を再構築できたのだろう。
それを支えたのは沢井。
世界と自身は限りなく断絶してる。
それは、似たような経験をしていても、していなくても。
けれど、わずかでも、つながっていさえすれば、
そこから、やり直すことは可能なのだろう。

限りなく孤独に近い、自分、そして、この世界。
それでも、絆を結ぶことはできるのだろう。
長い旅の果てに、それを発見した男を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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