英国王のスピーチ  
2011.06.16.Thu / 18:41 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






国民に自らの声を届け、
団結の象徴となり、
国民を勇気づけ、そして、導く。
それは国王としての重い責務。

時に、そんな重圧に負けそうになる。
自分は国王にふさわしい人間ではないと途方にくれる。
しかし、最後には、重い責務を果たすことができた。
自らのコンプレックスを克服し、
真の王になった男を描いた映画。

そして、友として、それを影から支えた男を描いた映画。
そんな私利私欲なき二人の友情がとても嬉しい映画。


欠点の多い、そして、王固有の悩みを持ちつつも、
真面目で誠実、親近感を感じてしまうジョージ6世を、
コリン・ファースが堅実に演じている。
脇を固める、ジェフリー・ラッシュとヘレナ・ボナム=カーターもとてもうまい。
予定調和的な映画で、ストーリーに驚きはない。
けれど、名優たちの見事な演技が飽きさせない。
映画というものを十分に堪能できる映画。




演説が上手に出来ない、ジョージ6世。
それは、国民に自らの声を届けるという責務を負った国王にとっては致命的なハンデ。
だからなのだろう。
自らの資質に疑問が生じる。
周りが自分を王に成る事を勧めるが、兄も裏切れないし、当然自信もない。
けれど、当然ながら転職はできない。
吃音というのは、
この映画では精神的なものから来るように描かれていた。
左利きを矯正された事。
X脚を矯正された事。
幼い頃に受けた虐待。
明確には述べられてはいないものの、
それらも、多分、原因に含まれるのだろう。


吃音を直すため、ジョージが最後に頼った医師、ライオネル。
どこか型破れで、王室にさえ遠慮がない男。
ライオネルは、吃音は精神から来る病であるという考えを持ち、
精神的な治療でジョージを直そうとする。
時にジョージの気分をわざと荒立てるライオネル。
するとジョージは雄弁に語りだす。

ライオネルも実は心に傷を持った男。
オーデションに何度も足を運ぶが、
セリフを完璧に覚えても、オーストラリアなまりで落とされてしまう。
だから、ジョージの無念さもよくわかるのだろう。


兄が退位をして、遂に王に成らなければならなくなってしまった。
喧嘩をして仲違いをしたが、やはり、頼りにするのは、ライオネル。
けれど、ライオネルは実は医師免許を持ってはいなかったのだ。
それを初めて知るジョージ。
問いただされたライオネルは、しかし、自信の潔白を堂々と説明する。
前回は、ジョージに王に成る事を勧めて失敗した、けれど、
今回は失敗するわけにはいかないのだ。目の前にいる友の為に。
その誠意と覚悟がジョージに伝わったのだろう。
ライオネルは、親族と同じ席に座ることが許される。


遂にドイツとの開戦を決定したイギリス。
敵はヒットラー。
「何を言ってるかわからんが演説はうまそうだ」
このセリフが端的にヒットラーのこの映画での立ち位置を表している。
演説内容よりは、演説技術に長けた男であり、
それ故に多くの人々を悪の道へ誘惑してきた男なのだ。
その男に対峙しなければならなくなったジョージ。

開戦の演説中、ジョージを導くように指示するライオネル。
それは師が弟子を、医師が患者を導くというよりは、
一人の友が、もう一人の友の窮地に対して、
手を差し伸べているというように、私には見えた。

無事に終える事が出来た演説。
国民に自らの声を届け、導くことができたジョージ。
それを見つめるライオネルの瞳が、実に優しい。
それ以降、お互いの呼び名を変えるのは、
ジョージが真に国王に成ったことをお互いが認めたためであろう。
けれど、呼び名が変われども、二人の友情と信頼は、
いささかも揺るぐことはない。

ライオネルに、「Wのところ、つっかえましたね」と指摘されても、
「私だと国民にわからせるためにさ。」と切り返すジョージ。
にやりと笑えるシーンでもあり、
ジョージが王としての自信を築いた事を示す名シーンであろう。

自らのコンプレックスを克服し、真の王になった男。
友として、それを影から支えた男。
そんな私利私欲なき二人の友情が見ていて、とても嬉しい映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.892 / タイトル あ行 /  comments(2)  /  trackbacks(3) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

文章力は遥かに違うけど、(^^;
ヤンさんと私の感想はほぼ同じでしたね~
真の王になった男と影から支えた男。そしてその友情。
とても心がほのぼのとする、良い映画でした。

主要の3人はもちろんの事、
父のマイケル・ガンボンやティモシー・スポールなど、
脇役もベテラン揃いで、すごく安定感がありました。
もうこの人達なら間違い無いでしょう!って感じでしたね。
何年か後に観ても良いと言える映画なんじゃないかな。

2011.10.05.Wed / 16:53 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

私は結構YANさんの文章は好きですよ。
暖かいというか、親近感を覚えます。

そして、
”ローグと国王は、その後もずっと友情が続いたという事なので、
嬉しい気持ちになりました。 ”
これは確かに、そう感じました。
普通でしたら、王の医師で吃音を直した、と欲が出て、
友情が壊れてしまいそうなのですが、
そうはならなかったのですね。
嬉しいラストです。

いつもは冴えない役ばかりのティモシー・スポールが、
英国の首相、あのチャーチルを演じていましたが、
違和感がないどころか、見事に演じてました。
これにはビックリでした。

それじゃ、また。

2011.10.05.Wed / 22:29 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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